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初打席初ホームラン&初お立ち台・大下誠一郎って何者? 父が手作りしたバッティングセンターで……

posted2020/09/20 09:00

 
初打席初ホームラン&初お立ち台・大下誠一郎って何者? 父が手作りしたバッティングセンターで……<Number Web> photograph by Kyodo News

初打席初ホームランを放った大下。中嶋監督代行も求めていたという明るいキャラクターはオリックスにどんな効果をもたらすか

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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 今年初めてほっともっとフィールド神戸で開催された9月15日の試合で、観客を沸かせたのは、オリックスの大下誠一郎だった。

 前日に育成契約から支配下登録されたばかりのルーキーは、即一軍登録されると、8番・三塁でスタメン出場した。

 まず目を引いたのは3桁の背番号だ。15日からの3連戦は「THANKS KOBE~がんばろうKOBE 25th~」を掲げた試合で、選手たちは1995年当時のオリックス・ブルーウェーブの復刻ユニフォームを着用した。大下は支配下登録に伴い、背番号が「006」から「40」に変わったが、復刻ユニフォームが間に合わなかったため、山岡洋之打撃投手の「102」のユニフォームを着用してプレーした。

 そして2回裏、1-1の同点に追いついた直後の1死一、三塁の場面で、初打席が回ってきた。「気合が入るし、自分らしい。ファンの人たちも喜んでくれると思った」という登場曲、嶋大輔の「男の勲章」が流れると球場が沸き、「何かやってくれるのでは」という期待感が広がった。

初打席初本塁打に、中嶋監督代行も「まさか」

 171㎝、89kgのがっしりした体格で、ルーキーとは思えない貫禄たっぷりの風貌だが、実は緊張しやすいたち。初打席は「足震えてました」と苦笑する。それでも、しっかりとボールを見極め、フルカウントからのストレートをフルスイング。低い弾道で伸びていったライナーは、レフトスタンドに突き刺さり、値千金の3点本塁打となった。

 興奮の渦の中、全力疾走していた大下は、二塁手前で本塁打と気づいて速度をゆるめ、笑顔でダイヤモンドを回った。チームメイトのハイタッチに迎えられ、腕や体を揺らして喜びを表現した。

 育成ドラフトで入団した選手の初打席初本塁打は、プロ野球史上初。“持っている男”が、最下位チームとは思えない明るい雰囲気と、快勝を運んできた。

 大下を抜擢した中嶋聡監督代行は、「元気と、積極的なバッティングが一番欲しいところだった。大下のあの元気でチームを乗せてほしいなと思っていたけど、まさか、あんな大仕事をして、乗せてくれるとは」と笑った。

【次ページ】 「入ったっち、思わんかったんですけど」

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