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ラグビー日本代表が今年の活動を断念……3年後のW杯で勝つために「なすべき」2つのこと
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byNaoya Sanuki/BUNGEISHUNJU
posted2020/09/17 11:40
2019年ラグビーW杯日本代表。2020年の活動を断念することが発表された。
ティア1勢とのマッチメイクをどう実現させていくか
3月のトップリーグ中断後の日々は、フィジカルのメンテナンスはもちろんメンタルを充電できる貴重な時間となっているのだろう。リーチを含めた代表候補の選手たちは、心身ともにリフレッシュした状態で21年以降の活動に参加できるはずだ。
気になるのは、その21年以降のマッチメイクだ。
15年W杯後から19年W杯までの強化で、日本はティア1の10か国とすべて対戦した。11年のW杯後から15年W杯までは4か国としか対戦できなかったから、W杯ホスト国の効果は絶大だった。W杯で使われるスタジアムで戦っておくことは、強豪国にとっても必要な準備の一環だからである。
23年のW杯へ向けた日本は、ホスト国の肩書を持っていない。国際的な競技力を最大のアピール材料として、ティア1勢とのマッチメイクを実現させていかなければならない。
岩渕専務理事によれば、「昨年のW杯でティア1の国々といい関係ができた」ことで、日本との対戦に前向きな反応を得られているという。問題は「強化期間の1年短縮」である。
日本を含めた各国は、20年、21年、22年、23年のW杯前の4つのタームで、テストマッチの相手を考えているはずだ。ところが、20年がカレンダーから消えてしまった。21年以降のテストマッチの相手について、ティア1勢はより厳選していくと考えられる。
19年W杯でベスト8に食い込んだ日本の実績は、どこまで持続的な価値を保っていけるのか。日本と対戦することについて、ティア1勢が必然性を感じてくれるのか。
振り返れば15年から19年の間に対戦したティア1勢も、必ずしもベストメンバーで日本と対戦したわけではなかった。彼らが日本戦に注ぐ熱量は、まだまだ読み切れないのが現実だ。マッチメイクを成立させるためにはテレビ放映権料などを活用し、ティア1勢を納得させる報酬を用意することも必要になってくるのだろう。
W杯ベスト8以上の代表選手がトップリーグに
突き詰めて考えると、W杯でベスト8以上の常連とならなければ、マッチメイクに奔走する現実は変わらない気がする。だとすれば、日本ラグビーが持つ人的資産を活用していきたい。
来年1月開幕のトップリーグでは、ニュージーランド代表のボーデン・バレット、南アフリカ代表のマカゾレ・マピンピ、イングランド代表のジョージ・クルーズ、元スコットランド代表のグレイグ・レイドローらがプレーする。昨シーズンはNTTコムに在籍した南アフリカ代表マルコム・マークスも、所属先をクボタに変えて再びトップリーグにやってくる。
リーグ戦の開催時期がズレているために来日しやすかった南半球の国々の選手だけでなく、北半球の国々からもトップレベルの選手がやってくるようになった。トップリーグのクラブが生み出す彼らとの関係を、将来につながる財産にできるかもしれない。2020年現在の現役選手がやがて指導者となったときに、日本とのテストマッチを後押ししてくれるような関係を築いていくのである。
23年のW杯につながるテストマッチを実現しつつ、5年後、10年後のラグビー界の発展につながるパイプを増やし、太くする。2つの視点から代表チームを見つめることで、ティア1と肩を並べる力をつけていけるはずだ。
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