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マエケンは子供たちのお手本中のお手本! 「ゆっくり急ぐ」打球処理に舌を巻く
posted2020/09/15 11:50
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph by
AFLO
少年野球を指導する日本の知人からメールが届いた。
「昨日のマエケンは投手にも野手にも参考になる。子供たちのお手本中のお手本!」
9月11日(日本時間12日)、ツインズの前田健太がインディアンス相手に7回4安打無失点7奪三振で5勝目を挙げた試合をネットで観戦した知人は、バットの芯を外す変化球と相手の裏をかく直球、さらには内野ゴロで併殺を取る投球に感心したという。「どの球をどこに投げるかを教えるにはこの上ないもの」と、息遣いが伝わってきた。
秀逸な打球処理にも触れ、「彼の動きには教えるべきことがたくさん詰まっている!!」と書いている。
転がる打球の中継者となっただけ
本拠地ターゲット・フィールドで、地元中継局のアナウンサーが「激レア!」と感嘆したのが2点をリードした5回表の打球処理だった。先頭の左打者ネークインの当たり損ねの一塁線ゴロを「あれしかないと思っていた」というグラブトスで、出塁を阻止したもの。
あれしかない――それはグラブの使い方を指している。転がるボールにグラブの背を向けたまま、最後はすくうようにして一塁手に送ったもの。グラブの捕球面でボールを収めたトスも、素手でいっても手首を使うロスタイムが生じてしまう。前田いわく、
「あそこから持ち替えると体の向き的にも、うまく投げられない。距離も近かったし、そんなに難しいプレーではないと僕は思う」
前田は芝生の状態も頭に入れていたはず。開始時間が42分遅れた試合は、その後も雨が断続的に落ち、フィールドの芝生は濡れていた。ボテボテの打球は乾いた芝を這うものより勢いづき直線的にくるため、グラブは差し出しやすかった。
とっさにイメージしたのは「打球の勢いを完全にグラブで殺さず一塁手に送ってあげる」ではなかったか。試合後のリモート会見で振り返った前田の「そんなに難しい動きではない」は謙遜からではなく、「転がる打球の中継者となっただけ」という感覚か強かったと受け取れる。