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マエケンは子供たちのお手本中のお手本! 「ゆっくり急ぐ」打球処理に舌を巻く
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byAFLO
posted2020/09/15 11:50
11日のインディアンス戦に登板した前田。5回表に見事な打球処理を見せ、実況アナを驚かせた。
「ゆっくり急ぐ」打球処理
見る者が舌を巻いたプレーは、遊び心とかかわっていた気がする。
いつだったか、ドジャース時代の春のキャンプで前田は足元に転がってくるボールを後方にいた通訳にヒョイとグラブトスし、見事に胸の位置に返している。その時のグラブの使い方はまさに今回のそれと同じだった。
もう1つ、改めて美技を検証すると、「ゆっくり急げ」が浮かんできた。
ラテン語の格言だが、原義には「物事を成功させるには慌てないこともしかり。急がないと達成できないのもしかり」の二律背反の両立が求められるという含みがあるとのこと。
前田の好守備は素早く打球に向かい捕球直前で余分な力を落としていたのが見事だった。もし、気持ちを出し過ぎたままでの捕球となれば、グラブの閉じ加減が強くなり、ボールは引っかかりあらぬ方向へ行くか、高く浮く危険性は大いに考えられる。
余談ながら、ローマ皇帝アウグストゥスの座右の銘とされるくだんの格言は、かつて西武ライオンズを6度の日本一に導いた名将・森祇晶氏(現評論家)から聞いたものだ。
知人はメールの最後をこう結んでいた。
「私を待つ練習前の数分に選手にはいろいろな場面を想像して実際に動いてもらうことをやってもらう」
指導者は学び、子供たちは上達欲をかき立てられる。前田健太の存在は日本野球の未来を育む良質な参考書になりつつある。