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内田篤人が日本のペップになる日まで。『スラムダンク』が彼と世界のかけ橋だ。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2020/09/02 11:40

内田篤人が日本のペップになる日まで。『スラムダンク』が彼と世界のかけ橋だ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

『スラムダンク』の魅力を語った内田篤人。バスケから、バドミントンから、柔軟にヒントを得ていった。

優勝とは何かを知る男。

 もし筆者がスポーツ団体のトップだったら、内田にこんなお願いをするだろう。

「大きな話題になったジョーダンのドキュメンタリー『ラストダンス』を見て、感想を語ったり、解説をしたりしてもえらませんか?」

 とは言っても、ジョーダンのラストシーズンを中心に描いた作品を見て、内田にとっての最後のシーズンを振り返ってもらいたいわけではない。そもそも、ピッチ上の内田は踊るというよりも、闘うという言葉がよく似合う。

 では、なぜ?

 内田がプロになって獲得したチームタイトルは、10を数える。

 これはヨーロッパ5大リーグの国と日本の両方で優勝した経験のある選手のタイトル数としては、歴代最多となる。内田こそ、優勝とは何かを知る男なのだ。

 プロの14年半をサイドバックとして生きてきたからこそ、自分が評価されるのは、自分が心から喜べるのは、チームが優勝したときだと感じていたのだろう。

 だから、優勝について考えてきたし、語ってきた。

「世界一は“なる”ものじゃなくて、結果が先なんですよ。禅問答みたいだけど、世界一になるためには、優勝するしかない」

『ラストダンス』はジョーダンのドキュメンタリーとして紹介されることが多いが、「チームスポーツの優勝とは何か」を描いたところに、凄みがある。

 そこには内田にしか気づけない発見がある。そして、我々が彼から学べるものがたくさんあるはずだ。勝つ、ために――。

内田が紡いだ最後の言葉。

 カシマスタジアムでの現役生活の最後に、スタンドと、カメラの向こうで観戦している「サッカーを通じて出会えた全ての人たち」に向けて、内田は挨拶をした。ファイターとして生きたのに、最後は口角を少しだけゆるめて、言葉をつむいだ。

 最後の言葉を選んだ理由はこうだ。

「1人のファンとしてカシマスタジアムにまた来たいと思っていましたし、サッカーの道で生きたいなとも思っていますし、サッカーを辞めるだけですからね。たぶん、どこかで会うんだろうと思います」

 そんな答えを知ってから、あの一言をかみしめると、彼の強い意志を読み取らずにはいられないのだ。

「また、会いましょう」

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