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内田篤人が日本のペップになる日まで。『スラムダンク』が彼と世界のかけ橋だ。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2020/09/02 11:40

内田篤人が日本のペップになる日まで。『スラムダンク』が彼と世界のかけ橋だ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

『スラムダンク』の魅力を語った内田篤人。バスケから、バドミントンから、柔軟にヒントを得ていった。

スポーツ界の不毛な垣根を超えろ。

 数年前、筆者は8年弱住んでいたドイツを離れて日本へ帰国することになり、それまでのお礼と報告をかねて関係者に挨拶をして回った。

 ドイツではサッカーを中心に取材していたが、日本に帰ってからバスケットボールを含めた色々な競技を取材する予定だと伝えると、ほとんどの人はネガティブな反応を示すか、言葉を濁した。ポジティブな反応をくれたのはわずか3人。そのうちの1人が(Tとは別の)Numberの編集者で、もう1人は内田が信頼を寄せる代理人の秋山祐輔氏だった。柔軟な考えを持つ内田が信頼するのは、やはり同じ性質を持つ人間なのだろう。

 日本のサッカー界は、野球界に追いつかないといけないという強迫観念があるからか、他のスポーツに関心を持つ人間に冷たい傾向がある。

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 一方のバスケ界は冬の時代が長かったので誰に対してもオープンなのだが、競技経験のない人に魅力を伝える方法がまだ確立されていない。

内田が他の競技とつないでくれた。

 ただ、トップを走る者たちの意識は変わってきていて、例えば40代前後のヘッドコーチ(HC)――Bリーグ初代王者・宇都宮ブレックスを率いる安齋竜三や、琉球ゴールデンキングスの前HCで、現在はブレックスのアシスタントを務める佐々宣央のように、グアルディオラから学んでいると公言する者もいる。

 あるいは千葉ジェッツふなばし大野篤史HCのような勉強家は、バスケの世界には”ペップ以前から”あった5レーン理論(大外の両サイドがアウトサイドレーン、それぞれの内側がインサイドレーン、中央がミドルレーンと呼ばれる)を自著の戦術本で解説している。

 そして内田も、日本スポーツ界の垣根を軽々と超えてしまいそうな感じがある。

 右足の大怪我は不運だったが、JISS(国立スポーツ科学センター)でリハビリをする期間は、内田にとって得るものも多かった。長谷部誠や清武弘嗣が、リハビリ期間に内田が他の競技の選手とサッカーをつないでくれたと感謝を口にしているのも興味深い。競技の壁をものともせず交流を深めてきた経験は、彼の財産である。

 ペップがニューヨークでの充電期間中にNBAを見て、名将グレッグ・ポポビッチ率いるサンアントニオ・スパーズの鮮やかなボールムーブからシュートを打つバスケに惹かれたように、内田もどんなものからでも学ぶ柔軟な心がある。サッカー界に復帰した時には、子どもの運動会で発見した何かを見せてくれるのかもしれない。

【次ページ】 優勝とは何かを知る男。

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