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内田篤人とシャルケの愛は永遠に。
2014年に想像していた引き際とは。
posted2020/08/28 11:30
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Itaru Chiba
内田篤人はシャルケに愛され、シャルケを愛した男だ。
8月23日、鹿島の地で長きにわたる現役生活にピリオドを打った内田だが、ドイツ在住の筆者にとっては、やはりシャルケ時代のプレーが忘れられない。
欧州チャンピオンズリーグでベスト4進出を遂げた2010-11シーズンのレギュラーで、右サイドでペルー代表ジェフェルソン・ファルファンと奏でたコンビネーションは相手の脅威となり、シャルケにとっては生命線のひとつだった。
内田が走り出すとワクワクする。軽やかな走りで右サイドを鮮やかに駆け上がり、敵陣深いところでボールを受けると何かが起きそうな気がした。ファルファンをはじめとする右サイドでコンビを組む選手が気持ちよくプレーできるように、気配りに満ちたプレーでアクセントを加える。
さらには右SBの位置でボールを収めても、ゲーム全体の流れをコントロールしてしまう。チーム全体が不用意にボールを失うことが多くなると、ゆっくり流れを落ち着ける。攻撃のリズムが沈滞しているときは、FWへ鋭い縦パスを入れて変化を加える。プレーの選択肢が多く、インテリジェンスを備えた内田は、チームに欠かせない選手だった。
「この練習を続けていけば強くなれる」
シャルケのファンもまた、内田を愛した。どんな時も、どんな試合でもクラブのために全力を尽くしてくれる選手だったからだ。
「ここのファンは戦う選手が好きだからね」
内田の言葉通り、ギリギリのところで体を投げ出してボールをクリアした時は愛称の“ウッシー”コールがスタジアムを揺さぶる。
そんな内田も、加入直後は体の線が細く、強靭な相手選手に何度も吹き飛ばされていた。練習から激しいぶつかり合いが日常茶飯事のドイツで、大きく成長した。
「この練習を続けていけば強くなれる」
シャルケでのデビュー戦後に、そう話していたことを覚えている。常にユニフォームを泥だらけにしながら、最後の最後まで必死で食らいついていく。そんな姿がファンの心を打たないわけがない。