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内田篤人が日本のペップになる日まで。『スラムダンク』が彼と世界のかけ橋だ。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/09/02 11:40
『スラムダンク』の魅力を語った内田篤人。バスケから、バドミントンから、柔軟にヒントを得ていった。
内田の名シーンは「大好きです」。
そういえば、2016年1月に発売された『Number』893号にまつわる、こんなエピソードがある。
「2016年の16人 挑戦者たち」と題された号は、取材時点ではどの選手が表紙を飾るのかが決まっていなかった。珍しいケースと言っていい。発売直前に担当のTが電話で、内田が表紙を飾ることになった理由を熱弁していた。
「写真が、本当に、素晴らしくて、編集長がGOサインを出してくれました!」
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掲載された計10枚のフォトグラファー・千葉格氏による写真のうち、3枚がボールを手で扱うところを収めたもので、そのうちの2枚はバスケ選手のようにシュートを打つものだった。
話を戻すと、『スラムダンク』についてのインタビューで内田が大好きなセリフやシーンを語った場面では、一部分ではなく、全体を俯瞰して見ることのできる彼らしい答えが返ってきていた。
「『スラムダンク』という物語は、1巻の『バスケットは…お好きですか?』という晴子さんの言葉から始まるわけです。そして、最後に花道が『大好きです』と答え、すべての伏線がそこで回収されるというね(中略)。『スラムダンク』の名シーンを聞かれて、このシーンを挙げる人がいると、『お、こいつ、わかっているな!』と勝手に思っています(笑)」
他の競技から柔軟にヒントを得られる。
『スラムダンク』とNBA(というかシカゴ・ブルズ)の影響もあり、バスケには特になじみが深かったからだろうか。サッカーで背後のスペースを狙われたときにどう対処すべきかを解説するときに、自ら図を描きながらマイケル・ジョーダンの「全体を上から見ているかのような視点が欲しい」と語ったこともある。
内田がサッカーの参考にしていたのは、バスケットだけではない。ドイツで行われた潮田玲子と池田信太郎によるバドミントンの混合ダブルスの試合を観戦したあとには、こう語っていた。
「ミスしたり、流れが悪くなったら、ラケットを替えてて。(中略)ラケットが悪かったから流れが悪かったんだって考える。で、プレーを持ち直せばいい。これはアリだな、と。サッカーでも、上手くいかないときって、いろんな原因がある。だから、適当に言い訳を作って、それで終わりにしちゃう」
内田はどんな競技からでも、柔軟にヒントを得られる資質を持った人間だった。