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CFGはなぜマリノスを選んだ?
日本から世界的ビッグクラブへの道。
posted2020/09/01 18:05
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
AFLO
ブライアン・マーウッドインタビューの後半である。
「シティ・フットボール・グループ(CFG)」はなぜ横浜F・マリノス(以下マリノス)を、パートナーシップ提携の相手に選んだのか。
提携後の道のりは起伏に富み、決して平たんではなかった。それでも成功できた要因は何であったのか。そして今後の展開は。マリノスが真の意味で世界的なクラブになっていくためには、いったい何が必要であるのか……。
ここに語られるのは、単なるひとつの成功譚ではない。サッカーの枠を超えたプロスポーツクラブの未来に向けての在り方を、マーウッドの言葉は示唆している。
「彼らをサポートしてマリノスを成功に導くこと」
――それではマリノスの話をしましょう。まず、どうしてマリノスをパートナーに選んだのか。CFGのフットボール・ディレクターを務めるチキ・ベギリスタインはかつて浦和でプレーしました。レッズを選んでいてもおかしくなかったのではないですか?
「それは日産がマンチェスター・シティ(以下MC)とCFGのスポンサーであったから決まったことだろう。日産との話し合いの末に、マリノスがグループの一員となった。議論の内容は車ではなくサッカーだったがね(笑)。日産との関係が、マリノスがサッカーだけに限らずビジネスにおいても何かをはじめる契機になった。そこからアイディアが生まれた。
コミュニケーションは密に取っている。クラブのスタッフとはよく話をしているし、関係は極めて良好だ。原さん(原正宏テクニカルスタッフ)や小倉さん(小倉勉スポーティングダイレクター)、黒澤さん(黒澤良二代表取締役社長)とは緊密な関係にある。私たちの第一の役割は、彼らをサポートしてマリノスを成功に導くことだ」
――あなた自身もマリノスと定期的なコンタクトをとっているのでしょうか?
「よく話をしている。毎週のように電話をかけているし、メールでも頻繁にやりとりしている。マリノスの試合はすべて見ているよ。監督との関係も極めて良好だ。緊密なコミュニケーションをとっているといえるが、それは世界の他のクラブも同様だ。安定した関係を維持していくのは、目的を達成するうえで最重要であるとさえいえる」
――CFGとの提携の後、マリノスにはまずエリク・モンバエルツ、続いてアンジェ・ポステコグルーが監督に就任しました。あなたが選んだのでしょうか?
「いや、そういう風に進めたわけではない。最初にサポートしたのは、何人かの監督をリストアップすることだった。
われわれはグローバルな視野に立ちながら、候補となる選手と監督を選ぶことができる。それはマリノスが鍵となる決定を下すためのサポートだった。ただ、それが唯一の選択だったわけではない。われわれにはそれぞれのクラブの要求に応えながら、世界のサッカーの実態に即応した最高の候補者リストを作れる自負がある。クラブの要求に的確に応えられる。
エリク・モンバエルツもアンジェ・ポステコグルーも、申し分のない選択だったと思う。ただ、ふたりを監督に決めたのはCFGの下した選択ではない。CFGとマリノスが話し合った末の決断だった。われわれはマリノスのプロセスの一部だし、マリノスの熱烈なファンだ」