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CFGはなぜマリノスを選んだ?
日本から世界的ビッグクラブへの道。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAFLO
posted2020/09/01 18:05
横浜F・マリノスに15年ぶりの優勝をもたらしたアンジェ・ポステコグルー監督。
エリクは優れた教師だった。
――エリクが私に語ったのは、彼の使命はMCのプレーコンセプトをマリノスに根づかせること、そして世代交代を進めることでした。
「彼は同じことを今、オーストラリア(メルボルン・シティ)でおこなっている。
エリクはマリノスのプレースタイルを変えていく上で重要な役割を担った。優れた教師だった。アーセン(・ベンゲル)ともジェラール・ウリエとも親しい友人だ。エリクはマリノスの辿ってきた歴史――そのプレースタイルに対して批判的だった。それはMCにおいてペジェグリーニがそれまでのプレースタイルに批判的であり、ペップがその後やって来て変革したのとまさに同じだった。
ペップは素晴らしいポゼッションサッカーを実践し、近年の成功を築きあげた。マリノスにはアンジェが赴任し、彼が別次元へと引き上げた。わかるだろう。ふたりの連携こそがキーであったことが。そこから特別なものを作りあげることができた」
――そこが当初は理解できませんでした。ふたりの関係が継続的な発展であったことが。断絶のように見えたのですが、実際には継続だったのですね。
「われわれはエリクがマリノスで3年を過ごし、ヨーロッパに戻りたがっているのを分かっていた。だが、横浜でスタートした方法論を継続すべきであることも理解していた。だから次の監督リストに載せた候補者たちは、スタイルを継続できるかどうかが大きなポイントだった。別のスタイルを標榜する監督だと、それまでの仕事が無駄になる。スタイルの継続は、われわれにとって最優先だった。ただ、アンジェのチームを見たとき……彼の最初のシーズンはうまくいかなかった」
「難しかったが、彼を信頼し続けた」
――あまりにラディカルというのが見た印象でした。とてもエキサイティングだけれども結果には結びつかない……。
「その通りだ(笑)。難しかったが、彼を信頼し続けた。この時期を乗り切ればうまくいくと。周囲の人々はナーバスになっていたが、われわれはナーバスではなかった。アンジェに絶大な信頼を寄せていた。ペップと同様に、彼は素晴らしい監督であると同時に素晴らしい人間でもある。とても謙虚だし、仕事に対して極めて真摯だ。周囲の人々ともうまくやっている。そうした価値観や行動は、われわれにとってとても重要なことだった」