水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
「ウッチーは“選択”を間違えない」
水沼貴史が称える内田篤人の凄み。
posted2020/08/25 20:00
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph by
Itaru Chiba
内田篤人が現役引退を発表しました。長らく日本サッカーを牽引してきた選手ですから、「ありがとう」という思いと、寂しい気持ちがありました。ただ、自らきっぱりと決断するところがとても彼らしい選択だったと思います。親しみを込めて、ここからは「ウッチー」でいかせてもらいますね。
7月に解説を担当した川崎戦でウッチーは今季初先発を飾りました。しかし、精彩を欠いて60分で交代。特に川崎MF長谷川竜也に失点を許したシーンでは、クロスボールの目測を誤り、試合後に自らを厳しい言葉で責め立てました。
もしかしたら「えっ、俺がこんなプレーするのか」という戸惑いみたいなものがあったのかもしれません。次の出場機会となった8月12日のルヴァンカップ清水戦で、満足のいくプレーができなかったことが決断の引き金になったと会見で話していました。
「自分の最後」を知るのはとても怖い。
サッカーに限らず、プロアスリートにとって、「自分の最後」を知るのはとても怖いことです。私も現役時代にそれを思い知ったことがあります。
いつものようにドリブルで仕掛けて切り返した時、体がついていかない、キレがなくなった感覚があった。ほんの少しの差ですが、そこは本人のみぞ知る部分。その瞬間、「あ、もうダメだな」と悟りました。
私もウッチーと同じようにシーズン途中で現役を引退しましたが、いまだにあの感覚は強烈に覚えていますよ。ウッチーの言葉を借りれば「サッカー選手として終わった」という感覚。さらにウッチーの場合はケガとの戦いも重なっていました。カテゴリーを下げてでもプレーする選択肢は考えられなかったでしょう。
それに「鹿島で終わりたい」という気持ちも大きかったはず。セレモニーではアントラーズの先輩たちが自分に教えてくれたように、後輩たちに経験をプレーで伝えることができない、と語っていました。覚悟を決めての古巣復帰でしたでしょうし、いかにも責任感の強いウッチーらしい言葉でした。
同時に鹿島の選手らしい発言だなとも感じました。ある意味、鹿島というクラブがウッチーをそういう選手に育てたんだなと。