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神戸、大胆な10人替えで浦和に勝利。
山口蛍「大きな刺激を得られる試合」
posted2020/08/25 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE
スタメン表を見て、正直驚いた。
8月23日に行われたJ1第12節の浦和レッズ戦、敵地に乗り込んだヴィッセル神戸は前節の柏レイソル戦からMFセルジ・サンペール以外の10人を入れ替えて臨んだ。
結論から言えば、2-1で勝利。この大胆采配は見事に功を奏した。
「今日は非常に満足している。10人もスタメンを替えたことで慣れていない部分もあったが、勝つ意欲を見せて出し切って、最後まで勝ち切ってくれた」
試合後の会見でトルステン・フィンク監督が語ったように、遠ざかっていた勝ち点3を掴んだことは今後の状況を鑑みても、大きな1勝だった。
“温存”を選択した勝負師フィンク。
では、なぜここまで思い切った策を取ったのか。
まず、過密日程の影響が挙げられるが、神戸はACL出場チームのため、ルヴァンカップのグループリーグを戦わなくていい。Jリーグの8月はルヴァンカップを入れると、22日まで全てのミッドウィークに試合があるレギュレーションだったが、神戸は他のクラブより2試合分の負担が少ない。柏戦が今月初の水曜日開催だっただけに、浦和戦ではある程度の主軸を出しても問題はなかった。
しかし、フィンク監督はその先を見据えていた。神戸はACLの日程変更によって前倒しとなった第24節川崎フロンターレ戦を26日に、29日には昨年度王者の横浜F・マリノスと第13節を控えている。さらに9月2日はルヴァンカップ準々決勝川崎戦、5日には第14節の湘南ベルマーレ戦と、過密な連戦をこなさなければならない。
川崎戦からルヴァン準々決勝までは全てホームで戦うことができるため、ホームの柏戦を戦った選手を休ませ、関東への移動となる浦和戦にメンバーを入れ替えて臨み、水曜にホームで首位の川崎を迎え撃つ。そこで勝利を掴んで横浜FM戦、そして一発勝負の川崎戦に挑む。そんなプランが見え隠れする。
ただ、もちろんこのゲームは神戸にとって「捨て試合」ではない。浦和は連勝中、一方の神戸はここ3試合で2敗1分け。ここで負けたらチーム全体の士気にも影響を及ぼしかねない。ましてや大敗しようものなら、マイナスに働く危険性もある諸刃の剣だ。
だが、フィンク監督は勝負師だった。「結果で示してみろ」と言わんばかりに、中途半端な選手起用ではなく、大胆に空気を入れ替える。そんな指揮官の狙いを察知したかのように、選ばれた選手たちは躍動した。