Jをめぐる冒険BACK NUMBER
クラモフスキー清水の設計図に注目。
“マリノス的+α”に想うオシムの言葉。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/22 09:00
派手な打ち合いに敗れたとはいえ、清水が前年王者マリノス相手に見せたサッカーは興味深かった。
「エスパルスの色という部分を」
右サイドバックの奥井諒が“ハーフスペース”に入って相手サイドバックをひきつけ、フリーになった右ウイングの金子がアーリークロスを流し込む。これが、相手のオウンゴールに繋がったのだ。
金子が狙いを明かす。
「相手がハイラインなのでアーリークロスは狙っていこうと思っていた。今日は外側のレーンでなかなか前向きでボールを受けられなかったので、思い切って早いタイミングで上げてみたら、オウンゴールという形になった。相手が触らなくても、カルリーニョスのところに行ったと思うので、その形は今後も増やしていきたい」
とはいえ、同じスタイルだからこそ、彼我の差を突きつけられることにもなった。
「率直にいうと、マリノスのほうが僕たちよりも走っていたし、試合のテンポやパススピードを肌で感じて、さすが昨年のチャンピオンだなと。今までにないくらい呼吸が乱れたし、今までにないくらい高強度のゲームになったので、学ぶことのほうが多かったです」
そう認めた金子は、しかし、きっぱりと言った。
「マリノスのスタイルを目指していますが、それプラスαでエスパルスの色という部分を今後作っていって、試合を重ねるごとに成長していきたいと思います」
「僕たちが楽しくなってきている」
エスパルスの色とは何か――。
例えば、こんなことが言えるかもしれない。
横浜の前線には仲川輝人と前田というリーグ屈指のスピードスターのふたりや、ジュニオール・サントス、エジガル・ジュニオ、エリキと、強烈な個性を放つアタッカーが揃い、多少強引にでも相手の守備組織を破壊する一面がある。
それに対して清水は、強烈な個性という点で劣るぶん、コンビネーションをさらに磨き、より緻密でテクニカルなアタックを見せれば、オリジナリティが際立つに違いない。まさにこの日に見せたバリエーション豊かな「裏狙い」のように――。
8月1日の浦和レッズ戦、内容で上回りながら1-1のドローに終わった試合後の、キャプテンの竹内涼の言葉が強く耳に残っている。
「立ち位置を意識したり、みんなでボールを繋いだり、保持したりして、相手のゴールに迫る、
相手のゴールを奪う、というサッカーをしている中で、互いの息も合ってきた。もっと良くなる部分はたくさんあるけれど、それでも繋がっている感じがするし、やっている僕たちが楽しくなってきている。精度や質をもっともっと上げて行ければ、もっと得点が取れると思います」