リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
バルサはベテラン切りできるのか。
クーマン新監督に求められる非情さ。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/08/24 11:00
クーマン新監督(右)を招聘したバルトメウ会長。自身の職も危ういとの報道もあるが、斜陽のバルサを立て直せるのだろうか。
ポチェッティーノではなくクーマン。
2つ目は、セティエン監督の解任とオランダ代表を率いていたロナルド・クーマンを後任に選んだこと。
当初有力視されていたのは、バルトメウと交友があるトッテナムの元監督ポチェッティーノだった。エスパニョールとの絆から「バルサを監督するぐらいなら母国アルゼンチンにある牧場で働く」と2年半前に公言した彼だが、早くに打診されたことでその気になっていたようで、今月初めの『エル・パイス』紙では「いまならそんなことは言わないだろう。人生何が起こるかわからない」と語っている。
しかし、新監督が最初に立ち向かわねばならない大仕事――後述するベテランの取捨選択――はポチェッティーノには向いていない。
力不足というのではなく、エスパニョールやバルトメウとの関係ゆえ、彼が下した判断にソシオが猛反発する可能性があるからだ。
後がない役員会にとって、それは大きなリスクである。
その点クーマンなら安心だ。1992年のチャンピオンズカップ(現CL)決勝戦のヒーローを、ソシオはいまも崇めている。
下衆な見方をすると、ソシオの怒りを買うようなことが起きても、バルトメウはクーマンを弾除けにすることができる。
強化部アビダルは詰腹を切らされた?
3つ目は、2年前からトップチームで強化責任者を務めてきたアビダルとの契約を解消したことだ。
バルトメウ体制下では実に4度目となる強化担当交代は「アビダルから申し出があった」からだとクラブはいう。職務を果たせなかったのは確かだし、今年1月のバルベルデ解任を選手のせいにしてメッシと衝突したこともあるので、筋は通っている。
が、その一方でバルトメウに詰腹を切らされたと見る向きも多い。強いチームを用意できないでいることこそが、メッシの不満の種だからだ。
ともあれ、後任はエスパニョールやヘタフェの元スポーツディレクターであり、これまでアビダルをサポートしてきたラモン・プラナスに決まり、クーマンは彼と組んでチームの立て直しに取り掛かる。