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ホークスを福岡に持ってきた男の夢。
2つのドーム構想と、令和の完成形。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2020/07/28 11:30

ホークスを福岡に持ってきた男の夢。2つのドーム構想と、令和の完成形。<Number Web> photograph by Kyodo News

「BOSS E・ZO FUKUOKA」の開業記念式典に参加した王貞治会長。施設内には、チームラボによるミュージアムなど多様なテナントが入る。

王会長「何でも持っていって」

 また、もともとドームの外野スタンド後方にあった「王貞治ベースボールミュージアム」が移設してリニューアルされた。世界のホームラン王と呼ばれた王会長の人生の軌跡、栄光のトロフィーなどが200点以上も展示されている。

 担当者によれば、かつてドーム内にあった展示物とは大きく入れ替わっているという。それでもこれだけの展示数があるのは驚きだ。また、もともとミュージアムを開業する際に王会長は「何でも持っていって」と球団の担当者に話したらしく、それを真に受けてほとんどの品を持ち運んだそうだ。過去を振り返らず、常に新しい明日を見据えている王会長らしいエピソードだ。

 だから王会長自身も、自身の展示物より強いこだわりを持っているのは、ミュージアム内に併設されている「89(野球)パーク」だ。

 以前のミュージアムからより拡大し、15種類の体験型アトラクションが設置された。千賀滉大の160キロを体験したり、周東佑京と15mダッシュ競走ができるほかに、実際に打ったり投げたりして、それを数値化して楽しめるように各所で工夫がされている。

「新たな野球の魅力を伝えたい。子どもたちに野球の楽しさを知ってもらいたい」

 王会長の切なる思いが込められた、何度も足を運びたくなる新時代のミュージアムとなっている。

 この福岡が世界に誇るエンタメ発信基地は、PayPayドームの4番ゲートのすぐ前に正面エントランスがある。本当に目と鼻の先だ。

1988年のツインドームシティ構想。

 ふと、思ったことがある。

 もともと福岡には巨大なドームが2つ、隣り合って出来るはずだった。「ツインドームシティ計画」をご存じだろうか。

 遡ること1988年のことだ。南海ホークス球団を買収し、福岡に移転させることを決めていたダイエーグループは、近い将来に福岡市のももち地区に福岡ドームとリゾートホテル、そしてドーム型複合商業施設の「ファンタジードーム」を建設して開業させる「福岡ツインドームシティ構想」を打ち出して福岡市に提出した。そして1992年2月には運営会社「ツインドームシティ」を設立した。

【次ページ】 2つめのドームは断念されたが……。

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