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ホークスを福岡に持ってきた男の夢。
2つのドーム構想と、令和の完成形。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/07/28 11:30
「BOSS E・ZO FUKUOKA」の開業記念式典に参加した王貞治会長。施設内には、チームラボによるミュージアムなど多様なテナントが入る。
2つめのドームは断念されたが……。
この「ファンタジードーム」は屋内アミューズメントパークとする案が持ち上がっていた。ドーム球場とホテルは実現したが、バブル崩壊後の消費低迷が厳しさを増す中でダイエー側が資金負担する体力は残っていなかった。
1998年に「ツインドームシティ計画」は事実上断念。もうひとつのドームが出来るはずだった場所には、2000年4月に、映画館などはあったが商業施設がメインの「ホークスタウン」が造られた。
しかし、現在はホークスタウンもなくなり、同地は「マークイズ福岡ももち」となっている。
昭和の最後の夢が令和に完成。
最先端エンターテインメントが集結した「BOSS E・ZO FUKUOKA」の誕生により、野球とエンタメが一体となったボールパーク化はひとつの集大成を迎えた。
昭和最後の年に持ち上がった壮大な計画が平成を飛び越えて令和の時代にようやく完成の時を迎えた。出来上がったのは「もう1つのドーム」ではなかったが、中身は当時の理想形そのままだ。
ファンの感動と喜びを創出したい――その夢を抱いてホークス球団を福岡に持ってきたのは、一大流通帝国を築き上げたダイエーグループ総帥の中内功氏だった。
中内氏は、天国から優しい微笑みで見つめてくれているだろうか。