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長岡望悠「また違う自分で成長を」。
2度の大怪我、バレー人生の再出発。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySAGA Hisamitsu springs
posted2020/07/25 11:30
2018年以来、日本代表に選出されている長岡望悠。代表でのプレーにも期待が膨らむ。
大会は中止に、それでも前を向く理由。
単発のジャンプやステップだけでなく、徐々にバレーボールに連動した動きができるようになり、2月頃からは全体練習にも加わった。当初は3月の天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会での復帰を目標に、実戦形式の練習も重ねて来た。「膝の感覚は前とは全く違う」と言いながらも、プレーに支障はなく、再びコートでプレーする日を自身も心待ちにしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い大会は中止に。
だがそれも、ネガティブに捉えるのではなく、むしろ前向きに捉えた。
「強度が高まる中で筋力の出力も変わるし、気づかぬうちに左脚をかばっていたせいか、右足首に少し炎症があったんです。自粛期間で練習もできなくなりましたが、身体を休めることもできたし、再開後は右足首に負荷がかからないように、左を頼るようになったおかげなのか、左膝の感覚がよくなった。
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ここまでしっかり段階を踏んできているから、炎症が出るのも悪いことではない、理由があると理解しているし、それもまた1つの段階。ゴールは復帰することじゃなくて、試合で活躍し続けるということだから、目の前の身体に向き合って、日々の成長を大事にしながら、日々過ごすことを大切にしたいです」
もしかしたらバレーを辞めていたかも。
最初のケガをした'17年までの自分を「向上心の鬼だった」と振り返り、笑う。決して自虐的にではなく、あくまで穏やかに。
「あのまま進んでいたらもうめいっぱいで、もしかしたらバレーを辞めていたかもしれない、と何度か思ったんです。それぐらい本当によく頑張ったし、頑張らせてもらった。でも今は力がスーッと抜けて、視野も広がって、また違う自分で成長しようと思いながら進んでいるので、違う充実感があります。経験を重ねるってこういうことなのかなって」
7月3日。長岡は2年ぶりに日本代表選手として追加登録された。
まだ状態は万全ではなく、本人も「驚いた」と言うが、求められる場で、できることに全力を尽くすと決め7月6日からの合宿にも参加。復帰までのギアを上げるべく、前向きに臨んでいる。
「先のことなんて本当にわからない、とよーくわかったので。何があるかわからないし、たとえ何があっても、それがこれから。それが結果です」
東京五輪でコートに立つ姿が見てみたい。そんな言葉は時期尚早で、野暮というもの。
落ち込んだり、立ち止まったりしながら、一歩ずつ前へ。明日につながる今日を、長岡望悠はバレーボール選手として、今、生きている。それで十分、それでいいのだ。