“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
三笘薫、川崎仕様のドリブラーへ。
「0から100できるのが僕の特徴」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/22 08:00
途中出場から流れを変えた三笘薫。切れ味鋭いドリブルは川崎のサッカーの中で着実に進化を遂げている。
開幕戦後の言葉を具現化したパス。
彼はこの中断期間を経て、この感覚を一層磨いたのだろう。それがはっきりとわかったのが横浜FC戦の68分のシーンだった。
左ワイドの高い位置でポジションをとっていた三笘は、右サイドの家長から大きなサイドチェンジを受けると、右足を引き込むトラップで足元深くに収め、対峙した相手DFが飛び込めないように間合いを作り出した。背後から登里がオーバーラップして来ることを認識すると、グッと前に重心を掛けてドリブルを繰り出そうとした。これに相手DF2人は食いついた。相手DFの頭には、厄介な「高速ドリブル」が浮かぶ。
三笘はその心理を逆手に取り、ボールを足元深くに置いたまま、短い足の振りでDF2人の間にスルーパスを通した。ドンピシャのタイミングで抜け出した登里の元へ。これもゴールへ結びつくことはなかったが、フロンターレらしいボールコントロールとドリブルを囮に使ったパスは、まさに彼の大きな成長を示していた。
開幕戦を終えた後に話した言葉を具現化したプレーだった。
「(ボールを)自分の置きたいところに置ければ、初速で絶対に勝てる自信がある。だからボールの置きどころはこだわっていますし、それが上手くいけば相手がよりドリブルを警戒してくれてパスが出しやすくなる。大学時代はどうしてもドリブルの印象を強く持たれていましたが、プロでは(DFの)間でボールをもらってスルーパスを出す機会は増えてくると思うし、そこも求められていると思う。ファイナルサードでの質の向上は自分が上に進むために重要なポイントだと思っています」
ジョーカーからの脱皮を。
三笘はまだスタメンの座は勝ち得ていない。ここまでジョーカー的な役割が続いている。周囲の信頼を掴むには、さらなる成長が必要なことは彼自身がよく分かっている。
「最後のゴールという部分が足りなくて、フィニッシュが課題。そこを改善できないと結果を出している(長谷川)竜也さんに勝てないと思うので、結果にこだわっていきたいと思います」
彼が紡ぎ出す「静」と「動」。強烈な緩急は大きなエネルギーとなってピッチで光り輝くだろう。それが研ぎ澄まされた時、彼は必要不可欠な存在になる。それは川崎にとっても、日本にとっても――。