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カズにデル・ピエロ、叫ぶ青嶋アナ。
セリエAダイジェスト伝説と遊び心。 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byAtsushi Iio

posted2020/07/20 07:00

カズにデル・ピエロ、叫ぶ青嶋アナ。セリエAダイジェスト伝説と遊び心。<Number Web> photograph by Atsushi Iio

取材に応じてくれた青嶋アナ(左)と当時プロデューサーの村社淳氏。彼らの情熱が伝説のサッカー番組「セリエAダイジェスト」を生み出した。

「は~いポスト、郵便です」秘話。

 そう熱弁する村社の隣でニコニコしながら「話半分で聞いてくださいね」とツッコミを入れたのは、青嶋達也その人だ。

「都市伝説ですよ。もう、ほんとにテレビ局の人間はすぐに盛ろうとするんだから、困ったもんですね(笑)」

 村社の証言は多少の誇張を含んでいるのかもしれないが、青嶋のリズミカルで、抑揚に富み、キャラ設定によって声色を使い分けるナレーションが『セリエAダイジェスト』の大きな魅力になったのは間違いない。名(迷)台詞が次々と誕生した。

「ルイ・コスタ、バティのホットライン、もしも~し」
「さあ、ストイチコフ、快足、快足(速)、三鷹行き」
「は~いポスト、郵便です」
「シュートふかして、フ~カフカ」

 声色を変え、テンポやリズムを変えながら、ノリッノリのキレッキレでキャラクターを演じるから、見ている方は思わずクスクス笑ってしまう。

「ジョカトーレ・カケトーレ」の対象選手がゴールを決めると「マ~ルカト~レ」と叫ぶ青嶋は、「マルカトーレ青嶋」として人気が定着していく。

 そんな青嶋を陰で支えたのが、スポーツライターの加部究だった。加部がまだスポーツ紙の記者だった頃に知り合った村社が、ナレーション原稿を書くブレーンとして声を掛けたのだった。青嶋が振り返る。

「最初にお会いしたのはお台場ではなく、(新宿区)河田町の社屋でしたね。加部さんが原稿を書いてくださって、僕がそれに色を加える、そうしたら翌週、加部さんがそのノリに合わせたものを書いて……って、そんなふうに楽しみながらやっていました。そうそう、シニョーリの語尾の『だもんね』は僕の出身地、浜松の方言である遠州弁。恐妻キャラとして推してきたのは、加部さんなんです(笑)」

「映像が届いて、よーい、ドン」

 セリエAの試合が行われるのは土曜日と日曜日。番組は火曜の深夜25時20分のスタートだが、全9試合を1時間くらいにまとめたハイライト映像が届くのは火曜の朝6時だった。それから打ち合わせを始め、10時から映像の編集を開始。出来上がると加部が映像に合わせてナレーション原稿を執筆する。

 16時からはさらに慌ただしくなる。青嶋が原稿と画面を睨みながらナレーションをまくしたてるのと同じ頃、ジョン・カビラ、中井美穂、ジローラモ、ゲスト解説者が集まり、出演者の打ち合わせがスタート。17時にメインカードを実況するジョン・カビラが試合映像をチェックし、20時からいよいよスタジオ収録が開始される。

 わずか45分の番組だが、準備はこれほどまでに大変だったのだ。村社が振り返る。

「映像が届いて、よーい、ドン。イタリアで日曜に行われる試合を火曜日の深夜に放送するんだけど、時差を考えると、ほぼ翌日の放送だから、よくやってたよね(笑)。ラッキーだったのは当時、F1中継の関係でイタリアにフジテレビの支局があったこと。そこのスタッフがカズに密着していたから、情報がたくさん送られてきたし、『ガゼッタ・デロ・スポルト』の内容もすぐに連絡してくれて」

【次ページ】 待望のカズ初得点とインタビュー。

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