Jをめぐる冒険BACK NUMBER
中田vs.名波の大雨、ドイツW杯決勝。
セリエAダイジェストの神髄とドラマ。
posted2020/07/20 07:05
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFLO
'94年夏にカズ(三浦知良)がジェノアに加入し、日本人初のセリエAプレーヤーの誕生をきっかけに始まったフジテレビの『セリエAダイジェスト』。この画期的なサッカー番組は、しかし、カズが1年でJリーグに復帰したため、放送2年目の'95-96シーズン終了時に、いったん最終回を迎えた。
その放送では、数人のJリーガーがVTRで出演し、セリエAで印象に残った試合や選手について答えているのだが、その中のひとりに、ベルマーレ平塚に所属していたプロ2年目の中田英寿がいた。
もっとも、中田は当初、インタビュー対象者ではなかった。
ヒデが挙げていた印象的な選手って?
そこには、今となっては考えられない経緯があった。番組のプロデューサーだった村社淳(むらこそ・きよし)が苦笑交じりに振り返る。
「その年の夏、アトランタ五輪に出場することが決まっていたから、本当はチームの顔であるゾノ(前園真聖)のインタビューが欲しかったの。でも、断られて。それで代わりと言ったらなんだけど、当時ゾノの子分といった印象だったヒデにインタビューを頼んだというわけ。その後、ふたりの立場は入れ替わるんだけど……。そのときヒデは、印象に残った選手として、(フランコ・)バレージの名前を挙げていましたね」
その放送の最後にジョン・カビラは力強く宣言した。
「I shall return(必ず戻ってきます)」
このセリフは、村社をはじめ、番組に携わったすべてのスタッフの、希望を込めた総意だったことだろう。
この時点では、最終回にVTR出演した19歳の若者のおかげで2年後に番組が復活するなんて、誰も想像しなかったに違いない。
しかも、その若者は、最高のリスタートを演出してくれるのだ。