Jをめぐる冒険BACK NUMBER
カズにデル・ピエロ、叫ぶ青嶋アナ。
セリエAダイジェスト伝説と遊び心。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2020/07/20 07:00
取材に応じてくれた青嶋アナ(左)と当時プロデューサーの村社淳氏。彼らの情熱が伝説のサッカー番組「セリエAダイジェスト」を生み出した。
ジョン・カビラを2年掛かりで口説く。
出演者のラインナップにもこだわった。都並敏史、奥寺康彦、清水秀彦、田嶋幸三らを解説者として招く一方で、メイン司会者にジョン・カビラを起用した。
J-WAVEの人気DJだったジョン・カビラは、テレビには出ないというポリシーを持っていた。だが、彼の力強く、心地良い声音とバイリンガル能力に惚れ込んだ村社が2年掛けて口説き落とした。
「カビラさんはJ-WAVE創設時からのスターナビゲーター。憧れのDJですよ。カビラさんがサッカー好きだっていうことも知っていたから、一緒に仕事がしたかった。でも、『テレビに出るのなら、一生面倒を見てくれるくらいの契約じゃないと出ません』と言われて。それくらい、顔を出すことには責任があるし、彼には自信があったわけ。カズがイタリアに行って、世界最強リーグをやるということで、ようやく出てもらえることになった」
アシスタントには当時のフジテレビの人気アナウンサーである中井美穂を、深夜番組にも関わらず、惜しげもなく登用する。このポジションはその後も中村江里子、西山喜久恵と、人気女子アナに引き継がれていく。
さらに、イタリアの情報通として、NHKの『イタリア語会話』に出演していたパンツェッタ・ジローラモをコメンテーターに抜擢した。
「初めて会うとき、『12時にフジテレビに来てくれ』と伝えたら、ジローちゃんは15分前にやって来た。でも、時間通りに来たのはそのときだけ。イタリア時間っていうの? その後はいつも遅刻(笑)。そんないい加減なやつなんだけど、親しみの持てるキャラで助かりました。その後、『ちょいワル』でブレイクするなんて、夢にも思わなかったけどね」
ものすごく早口のアナが必要だ。
村社の構想は、それだけに留まらない。
「セリエAを初めて見る視聴者が多いわけだから、情報量をなるべく盛り込んだほうがいい。それにはものすごく早口で、たくさんの情報を伝えられるアナウンサーが必要だったんだけど、ちょうどうってつけのやつがいてね」
それが、アナウンス部の若きエース、青嶋達也だった。
「スプリンターズステークスという、中山競馬場で行われるGIレースがあるんですよ。1200mの短距離だから、普通は16頭すべての馬の名前を言うのもギリギリなのに、青嶋はそれを2回言い切ることができた。スポーツの原稿って1枚20秒。1分で1試合を伝える場合、3枚で済むんだけど、青嶋は5枚必要だった。それくらい凄かった」