球体とリズムBACK NUMBER
出遅れた王者マリノス、挽回なるか。
喜田拓也「乗り越える自信はある」
posted2020/07/14 18:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE
限定的に戻ってきたサポーターの前でも、王者のエンジンは温まりきらなかった。
10日に政府がイベント開催制限を緩和し、先週末からJリーグにも最大5000人の観客の入場が認められるようになり、12日の日産スタジアムにも4769人のファンが入った。7万2327人を収容する会場でその数の人々が席を埋めても、ホームの利と言えるかはわからない。
ましてこの日の一戦、横浜F・マリノス対FC東京といえば、昨季の最終節にこのスタジアムで優勝を争ったカードで、あの時はJ1リーグ新記録となる6万3854人を集めた。
それでも過去2試合の無観客と比べると、明らかにポジティブな前進と言える(それにもしこれがニューノーマル──新様式となるのであれば、慣れる必要もある)。ファンは声援を禁じられ、手を叩くことでしか選手たちをサポートできないが、「(ファンが)いるといないとでは、大きく違います。拍手をもらえるだけでも、選手たちは勇気づけられます」と試合後に横浜の遠藤渓太は語っている。
先制点で波に乗ったと思いきや。
その背番号11が開始早々に先制点を奪った時は、昨季のリーグを席巻したスピーディーでアグレッシブな横浜のスタイルがいよいよ本領を発揮するかとも思われた。
右サイドのスローインから、いったん中央の天野純に渡ると、ダイレクトで再び右の水沼宏太へ。そこからのクロスを中央のオナイウ阿道がマーカーと競り合いながら後ろへそらし、逆サイドから走りこんできた遠藤が足裏のボレーでネットを揺らした。
マリノスは前節の湘南ベルマーレ戦で、痺れる試合展開から最後は3-2で今季初勝利を飾っている。後半だけで5得点が記録された撃ち合いの神奈川ダービーを制した後、再開後初の日産スタジアム(少ないとはいえ、観客も戻ってきた)で序盤に先制──チャンピオンが波に乗り始めても不思議ではないプロセスだ。
けれどこの日のFC東京は、試合後に長谷川健太監督が喜んだように「リバウンドメンタリティ」に優れていた。