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7月4日は清水エスパルスの誕生日。
J再開は王国復活の第一歩となるか。
text by
望月文夫Fumio Mochizuki
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/02 20:00
1993年Jリーグ開幕戦時の大榎克己(5番)ら清水の選手たち。彼らが紡いできた王国の歴史を、現メンバーは復権できるか。
初年度のナビスコ杯でつかんだ自信。
そして、この勝利が清水を加速させる。大榎氏は「JSL時代の松下はつなぐサッカーを主としていたチームで、そこに勝てたことが大きな自信になったことは事実」とし、まさに大きな1勝だった。
それまで厳しい視線を送っていたメディアも、この勝利を目の当たりにして手のひらを返すように清水の評価を上方修正した。
その国内デビュー戦から約2カ月後に開幕したJリーグ最初の公式戦である第1回ナビスコ杯でも、清水は予選リーグ初戦こそ名古屋グランパスエイト(現・名古屋グランパス)に0-3と敗れたものの、そこから巻き返して決勝進出。
そこまでJSLをけん引してきたヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)には0-1で敗れたものの、サッカー王国清水の象徴となったオレンジ集団は準優勝で幕を閉じた。
DFとして大きく貢献した内藤直樹氏(現・清水スカウト部長)は、「ヴェルディと力の差はあったが、順当な結果だったと思う」と前置きし、「試合を重ねるうちに徐々に連携と自信を深めていった」と、静岡サッカーの底力に国内デビュー戦から始まった勢いを上乗せした結果だったと振り返った。
クラモフスキー監督はタイトルを狙う。
しかし、かつて存在した底力は徐々に衰え、2010年代以降の清水は残留争いの常連となり、ついに2015年にはJ2降格も経験した。その後も下位に低迷し、浮上の機会をうかがえない状況がしばらく続いている。日本一が当たり前だった子供世代も、かつてのような隆盛はもう見られない。
そんな静岡サッカーに1月、朗報が届いた。正月の高校サッカーでの男女アベックVだ。地元では、「王国復権へ次はエスパルスの番だ」と期待を高めるが、奇をてらったかのように昨年横浜F・マリノスをコーチとしてリーグ王者に導いたピーター・クラモフスキー監督が就任。そこから「目標はトロフィーだ」と、タイトル獲得への意欲を繰り返してきた。