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生前のクライフの“理論派監督”批判。
では、真に「美しいサッカー」とは?
text by
永井洋一Yoichi Nagai
photograph byANP/AFLO
posted2020/06/28 19:45
“フライング・ダッチマン”ヨハン・クライフは、優れた選手であるだけでなく、まさに革命家だった。
クライフに匹敵する衝撃はいまだに……。
あれから17年。
果たして、プレスなどモノともしない、というテクニックを持った選手が何人、輩出されたのであろうか。
その筆頭にいるであろうメッシは今、当時のクライフのように変幻自在の活躍を披露してくれている。しかし、彼が「特別」であることは現役時代のクライフと同じである。
今、クライフの語った「育成環境の充実」は、主要なクラブで推進されつつある。その恩恵で優れた選手が次々に生み出され、確かにレベルの平均値は格段に上がったと感じられる。しかし、あの'74年のクライフに感じた衝撃に匹敵するプレーを披露してくれる選手はなかなか現れない。レジェンドが熱弁とともに残したレシピをなぞってみても、同じスペクタクルは生み出されないのであろうか。真のスペクタクルはレシピの問題ではなく、スペクタクルに相応しいプレーヤーの降臨があってこそのことなのであろうか。
プレーと同様、人生をもスピーディーに駆け抜けていったフライング・ダッチマンは、今でも「その程度のテクニックではダメなのだ」と天空から苦言を呈しているかもしれない。
(Number901号「『美しいサッカー』とは、何だったのか」より)