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マンCの通常運転、黙祷、BLM運動。
悲劇も差別も乗り越えプレミア再開。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2020/06/21 11:50

マンCの通常運転、黙祷、BLM運動。悲劇も差別も乗り越えプレミア再開。<Number Web> photograph by Getty Images

「Black Lives Matter」を象徴する片膝付きポーズを取るアーセナルのオーバメヤン。世界の今を象徴する1枚だ。

犠牲者への黙祷と、片膝つき。

 この国の人々にとって、サッカーが本来あるべき存在として完全に戻ることは、家族や友人たちと試合に足を運び、その行き帰りにビールやワインのグラスを片手に、ファンの特権である勝手なサッカー談義を心ゆくまで楽しめる日が戻るまであり得はしない。

 だが、中断前に未消化だった2試合が行われた今季再開初日でさえ、たとえ計3時間ほどでも、心の痛むニュースが多い日常を忘れることができた。

 サッカーが「重要ではない物事の中で最も重要」と言われる所以を証明したことには、ゴールが認められていればCL出場権獲得も現実味を増したシェフィールドのファンも、ミケル・アルテタ新体制下での今年初黒星にして、トップ4復帰の現実味が薄れる力負けに気を落とすアーセナルのファンも同感のはずだ。

 しかも、忘れてはならない現実がないがしろにされたわけではない。

 キックオフを前に、新型コロナウイルスによる犠牲者に捧げられた黙祷は、アストンビラのディーン・スミス監督は父親を、マンCを率いるグアルディオラは母親を失った遺族でもあるだけに、尚更エモーショナルだった。

 続いて主審の笛がなると、ピッチ上の選手22名が一斉に片膝をピッチにつけて、人種差別撲滅への意思を表示した。

 彼らの背中には、ネームの代わりに「Black Lives Matter (黒人の命も大切だ)」の文字があり、審判員もベンチの面々も同じポーズで一致団結の構えを披露。階級社会の英国でも根深い問題に対するメッセージをパワフルに発していた。そして、続くポジティブな現実逃避の90分が繰り広げられた。

 プレミアよ、ウェルカム・バック!

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