プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンCの通常運転、黙祷、BLM運動。
悲劇も差別も乗り越えプレミア再開。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/06/21 11:50
「Black Lives Matter」を象徴する片膝付きポーズを取るアーセナルのオーバメヤン。世界の今を象徴する1枚だ。
テレビ中継では「観衆ノイズ」が。
マンCでも、スターリングの2020年初ゴールとなる先制弾直後に、ベテランMFのダビド・シルバが肩を抱くようにして祝福していた。
とはいえ、いずれも限りなく無意識に近い行動で、ソーシャル・ディスタンスの必要性を説く保健大臣でさえ、歩きながら同僚の肩をポンと叩いて議会に向かう姿が映されているのだから、ピッチ上でプレー中の選手が新ルールを守り切れなくても当面は適応努力中として大目に見るべきだろう。
この日のシルバはデブライネと同じく「さすが」と思わせた1人だが、3カ月前まではあり得なかったテレビ中継の効果音に違和感を覚えさせた1人でもある。
2つのチャンネルに分けた『スカイ・スポーツ』による中継は、一方が「観衆ノイズ」付き。たまにチャンネルを変えながら見てみたが、カウンターに転じた場面で「ウォーッ」と聞こえると、確かにそれっぽい。
ドリブルも気のせいかより速く見える。だが、偽物は偽物。シルバが素早いビルドアップ中にデブライネにワンタッチで送った27分のパスに対して、生身のエティハド観衆であれば通り一遍の歓声ではなく、感嘆の溜息を漏らしていたはずだ。
総体的には、効果音なしのチャンネルで観戦した時間の方が長かった。ひと月ほど前、一足先に再開されたブンデスリーガ中継の際にも感じたことだが、試合も後半に入ると、無観客の静けさより、プレーの見事さに意識がいくものだ。
過密日程による怪我の懸念は……。
前半8分に足首を痛めたグラニト・ジャカに始まり、計3選手が怪我でピッチを降りたエティハドでの光景も、3カ月間のブランクを経た再開後を思わせたとは言える。
マンCのCBエリック・ガルシアがGKエデルソンと正面衝突した事故によるものだが、ジョゼップ・グアルディオラ監督は短期間の調整だけで39日間に92試合を消化するリーグに、「多くの怪我人が出てしまいそうだ」との懸念を口にしていた。
そのグアルディオラの口癖ではないが、実際に始まったからには「It is what it is(仕方のないことさ)」と、超過密日程を受け入れなければならない。
控え選手が7人から9人に、交代枠が3枠から5枠に拡大された特別ルールを活用しながら、出来る限りのコンディション管理を図ってもらうしかない。なししろ再開を心待ちにしていたイングランド庶民にとっては、毎日のように押し寄せる試合も大歓迎なのだ。