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野村祐輔、9年目で初の二軍スタート。
良いものをより良くする方が難しい。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2020/06/13 09:00

野村祐輔、9年目で初の二軍スタート。良いものをより良くする方が難しい。<Number Web> photograph by Kyodo News

プロ入りから8年間で71勝、昨季はFA権取得も2年契約で残留した。

抜群の出来が、誤算の1年の起因に。

「チェンジアップがいいときは……結果論なんですけど、抑えていますね。真っすぐ、他の球種のコントロールが良かったから思い通りに打者が打ってくれた。『この球でショートゴロ打ってください』と思って投げたら、ショートゴロを打ってくれた。イメージ通りの試合だった」

 あの衝撃の投球から、シーズン6勝5敗、防御率4.06の成績は考えられない。勝利投手になった試合でも、あのときの驚きがあるから「まだできるはず」という思いは拭えなかった。

 本人の中でも戸惑いはあったようだ。振り返れば、抜群の初登板が、誤算のシーズンの起因となった。

「1個できると、次(のレベル)をやりたがるんですよね。もっと良くしようと。いろいろと試していくと、バラバラになってしまう。ちょっとずつでもレベルアップしないと維持することもできないと思っている。ずっと同じだと後退になってしまう。答えがひとつではない。こればっかりは結果で話をすると難しい。いろんなことを自分の中で挑戦してきたことはあります」

高みを目指して招いたボタンのかけ違い。

 野村には150km超の真っすぐがあるわけではない。投球の割合は真っすぐも含め、全球種を均等に投げなげら抑えていく。とはいえ、投球の基本に真っすぐがあるのは野村も変わらない。

「(真っすぐが)いいから割合が増えるわけでもないし、割合が少ないからといって悪いわけでもない。ただ、真っすぐがいいと他の球種もいい。真っすぐの出来が他の球種に影響する」

 繊細なポジションである投手の中でも、技巧派投手はより繊細だ。小手先でごまかすことができない。

 昨年は手応えを感じた初登板で、さらなる高みを目指したはずが、わずかなボタンのかけ違いとなり、気付いたときには大きなずれとなっていた。悪いものを正すよりも、良いものをより良くする作業の方が実は難しい。

【次ページ】 感覚のズレはあるが、光は見える。

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