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野村祐輔、9年目で初の二軍スタート。
良いものをより良くする方が難しい。

posted2020/06/13 09:00

 
野村祐輔、9年目で初の二軍スタート。良いものをより良くする方が難しい。<Number Web> photograph by Kyodo News

プロ入りから8年間で71勝、昨季はFA権取得も2年契約で残留した。

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 梅雨の訪れとともに、いよいよプロ野球のシーズンが幕を開ける。佐々岡真司監督が指揮を執る広島も開幕を迎えるメンバーが見えてきた。大瀬良大地、クリス・ジョンソン、ドラフト1位の新人・森下暢仁らが並ぶ先発ローテーション投手の中に、野村祐輔の名前がない。プロ入り9年目で初めて開幕を二軍で迎えることになりそうだ。

 オフの自主トレ期間に体重増を果たして臨んだ春季キャンプ序盤、坂道を駆け上がる際に右ふくらはぎを痛めた。再発のリスクが伴う「右腓腹筋損傷」と診断され、開幕ローテーション争いから大きく外れることになった。

 入団1年目に新人王を獲得し、8年間で広島の現役最多71勝の実績から言えば、ケガさえなければローテーション入りは間違いなかっただろう。誰より野村がそう思っている。

「一番は『悔しい』ですよね。自分はそこにいないといけないと思っていますし、そこに居られないことが自分に対しても悔しい」

 最多勝と最高勝率の投手2冠を獲得した2016年を機に成績が下降しているとはいえ、先発ローテーションを守り続けることができ、日本人先発投手ではチーム最年長。欠かせない戦力であることは間違いない。

今も残るチェンジアップの衝撃。

 わずか6勝に終わった昨年、野村の投球で忘れられない試合がある。

 2月25日の楽天との練習試合。野村にとってこの年初めての対外試合登板だった。その日見たブレーキの効いたチェンジアップの衝撃は今でも残る。三塁側バックネット裏後方の席。記者は投球を見た場所まで、まだ鮮明に覚えている。

 真っすぐの軌道から打者の1m手前くらいで突然速度が落ちる。あれだけ離れたところからも明らかな球速差を感じるチェンジアップにはそうそうお目にかかれない。

 まだ調整段階で真っすぐの最速は140kmも、打者は対応できない。おもしろいように楽天打者のタイミングを外し、凡打の山。3回まで投げ、毎回の4奪三振。許した安打は内野安打1本のみ。外野に1度も打球が飛ばなかった。緒方孝市監督(当時)も試合後「キレッキレだったね。びっくりした」と驚いていた様子で、野村本人も大きな手ごたえを感じていた。

【次ページ】 抜群の出来が、誤算の1年の起因に。

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