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鎌田が憧れ、宇佐美の初陣で気配り。
長谷部誠アジア人最多出場の深み。
posted2020/06/11 20:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
ドイツ・ブンデスリーガのフランクフルトでプレーする長谷部誠は、30節マインツ戦でブンデスリーガ通算出場数を309試合とし、1970年代から'80年代に活躍した元韓国代表チャ・ブンクン氏の308試合出場を上回り、アジア人最多出場記録を更新した。
昨シーズン、35歳ながら3バック中央で主力としてプレーし続けた長谷部は、スポーツディレクターのフレディ・ボビッチから「まるで上質な赤ワインのよう。年齢を重ねるにつれて熟成されている」と絶賛されていた。
ただ、そのボビッチにしても「来季も今季のようなプレーを見せてくれたらうれしい」と話していたが、果たして36歳となってもまだクオリティを落とすことなく、一線級でプレーできると信じていた人は、果たしてどれだけいただろうか。
36歳。衰えが見えても何の不思議もない。そういう時がきて、サッカーシューズを脱ぐ瞬間を迎えることになる可能性だって、十分考えられたはず。今季前半戦の終盤にチームパフォーマンスが急激に落ちてきたことを受け、アドルフ・ヒュッター監督は後半戦から4バックへのシステム変更を決断した。
実のところ、その影響もあって長谷部がベンチを温める日は増えてきていた。
システム変更の犠牲、待望論も。
地元紙が「システム変更の犠牲者となった」と論じ出していた。
さらに、今シーズンいっぱいで切れる契約が延長されないこともあり得るのではないかと案じる記事も。ところが、長谷部はまたグラウンドに戻ってきた。これまで通り代えのきかないリーダーとして、だ。
4バックへの変更により守備バランスが改善されて、手堅く勝ち点をあげられるようになっていたはずのチームは、相手に対策を練られたことで再び調子を落とした。守備強化を狙った布陣に固さはある。ただそのぶん攻撃時にはボールを思い通りに運べず、相手に狙われては不用意にボールを失い、失点を重ねていた。
5月16日にブンデスリーガが再開されてから2連敗すると、多くの地元メディアからは長谷部待望論が頻出した。
「攻撃の構築がまったく見られない。守備時の組織が乱れてしまう。それを改善するためフランクフルトでベストプレーヤーの長谷部は欠かせないのではないか」と。