欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
鎌田が憧れ、宇佐美の初陣で気配り。
長谷部誠アジア人最多出場の深み。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/06/11 20:00
今季のフランクフルトは苦戦を強いられている。とはいえ長年にわたってブンデスで戦う長谷部誠の価値が減じることはない。
鎌田がブンデス初得点の試合でも。
ヒュッター監督の見解も同じだったのかもしれない。28節フライブルク戦からは、また3バック+長谷部へとシステムを戻している。
この試合のフランクフルトは軽率なミスから失点を重ね試合途中まで1-3とリードを許していたが、鎌田大地のブンデスリーガ初ゴールもあり、なんとか3-3の引き分けに持ち込むことができた。
勝てなかったことは確かに痛い。それでもこの日の試合内容は間違いなく今後に期待を持たせるものがあった。
長谷部を起点に、左右前後にテンポよくパスが展開された。特に長谷部からアンドレ・シウバや鎌田への縦パスが素晴らしかった。絶妙なタイミングで正確なクサビが入るので、オフェンス陣が自分たちの形でシュートチャンスまで持ち込みやすくなる。守備でも相手の攻撃を読み切り、的確なポジショニングで相手の攻撃を寸断してみせた。
長谷部というコアが様々な綻びを繕っていく。
鎌田が口にした興味深い長谷部評。
チームには秩序が戻り、プレーのひとつひとつに意図が込められる。だからこそ、ヴォルフスブルク、ブレーメン相手に大事な2連勝を飾ることができたのだ。現在のチームから長谷部を外して考えることはできない。
記録更新となったマインツ戦でもフル出場で309試合出場に華を添えた。それにしても偉大な記録だ。
フランクフルトで同僚の鎌田が、今季のケルン戦で長谷部が通算300試合出場を達成したとき、長谷部について次のように語っていたことを思い出す。
「Jリーグでもなかなか達成できる人がいないのに、日本人がヨーロッパで、ブンデスで長いこと試合に出続けているというのはすごいと思う。彼の人間性だったりね。そういう部分もあると思う。300試合というのは誰でもできることではない。これから先できる人が出てくるかどうか……」
ただし、長谷部自身はきっと記録達成の喜びよりも、試合に敗れた悔しさの方を感じていたのではないだろうか。