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鎌田が憧れ、宇佐美の初陣で気配り。
長谷部誠アジア人最多出場の深み。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/06/11 20:00
今季のフランクフルトは苦戦を強いられている。とはいえ長年にわたってブンデスで戦う長谷部誠の価値が減じることはない。
奥寺超え、300戦出場ともに敗戦。
実は奥寺康彦氏が持っていた日本人最多記録(234試合)を更新したフライブルク戦も、300試合出場を成し遂げたケルン戦も試合には負けている。
「個人的には数字よりも、今日の勝ち点3の方が重要だったし、それが取れなかったってことが非常に悔しいところではあるんです」
ケルン戦後、笑顔の前にそう話して悔しがっていた。個人的な記録よりも、まずチームとしての成功こそが何より大切なのだ。
そして、この負けん気の強さ、どんなときも向上心を失わない姿勢こそが、長谷部の“今”を形作っている大事な要素ではないだろうか。
マガトもフィンケも称賛した。
「目の前の一戦に集中していって、その積み重ねが最終的な結果になる」
今回、過去の取材ノートを改めて見直してみたが、こうした発言がたびたび出てくる。ちなみに、2011-12シーズンにヴォルフスブルクで残留争いに沈んでいた頃のコメントだ。長谷部はどんなにいい試合をしても決して満足はしない。必ず自分を見つめ直し、自分に足りないところと向き合い、もっといいプレーができるようにと取り組んでいく。
ずっとそうだ。ドイツへ渡ってから、いやドイツに来る前からずっと。長谷部には妥協という言葉はない。
ヴォルフスブルクの元監督フェリックス・マガトは、長谷部のプロフェッショナルな姿勢を称賛していた。日本代表でチームを離れても、休暇で日本に戻っても、どんなときもコンディションを落とすことなく帰ってくる。
あるいは元フライブルク監督で日本でも監督歴があるフォルカー・フィンケは、「本来外国語を学ぶというのは日本人にとってお気に入りの作業ではない。しかし彼の持つプロフェッショナリズムはこうした分野でも徹底されている」と、ピッチの外でも当たり前に見せる向上心を絶賛していた。
フランクフルトの試合後は、ドイツ語を流暢に操る長谷部が地元メディアに囲まれるのが日常的な風景だ。