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荒木絵里香が語る「1年」の重み。
バレー選手、母としての2つの覚悟。

posted2020/06/03 20:00

 
荒木絵里香が語る「1年」の重み。バレー選手、母としての2つの覚悟。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

北京、ロンドン、リオに続いて4度目のオリンピック出場を目指す荒木はチームに欠かせない存在だ。

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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Kaoru Watanabe/JMPA

 マラソンにたとえるならば、40kmを全力で走り、残すは2.195km。スタート時よりもはるかにくたびれて、息も上がっているけれど、でもゴールまであと少し。テープが見えたらラストスパート。まだ、ダッシュだってできるはずだ。荒木絵里香はまさにその状態だった。

 2020年が明け、Vリーグのシーズンを終え、日本代表の合宿がスタート。たとえ娘の卒園式や入学式は見られずとも、バレーボール選手として何としても叶えたい夢がある。今までずっと待たせていた分、ゴールした後にいくらでも、母親として共に時間を過ごそう。荒木はそう考え、オリンピックイヤーを迎えた。

 7月の東京五輪まであと少し、もう少し。そう思っていた矢先だった。

 3月24日、東京五輪の1年程度の延期が決定した。昨今の事情を考えれば仕方ないと思いつつ「ショックだった」と荒木は落胆を隠さなかった。

「(2020年の)夏で、バレーボールを辞めようと思っていたんです。自分のキャリア、家族。いろんなライフプランがあって、娘の学校を考えて住む場所も決めた。とにかくフルギアでそこまで走り続けようと思って全力でラストスパートのダッシュをしていたら、“あと10km追加です”と言われたような気持ち。若干、打ちのめされた感がありました」

実績を見れば、当然の「主将就任」。

 1月27日に発表された今季の女子バレー日本代表候補選手は29名。その中で主将に任命されたのが荒木だった。

 荒木は、眞鍋政義監督が指揮を執った2009年からロンドン五輪でメダルを獲得した2012年まで主将を務めた。Vリーグや日本代表、これまでの実績を考えても納得の任命ではあるのだが、それを受ける側からすれば伴う覚悟は当然違う。

 チーム最年長で五輪のメダリスト。しかも、母国開催の五輪での主将。そのプレッシャーは計り知れない。一昨年の世界選手権や昨年のワールドカップ、長期に渡る国際大会のたびに「自分のプレーや身体を維持するだけで精いっぱい」と苦笑いを浮かべながら戦ってきた荒木が、それでも主将就任を決めた理由は何か。

【次ページ】 リオ五輪で見たブラジル代表の姿。

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