All in the Next ChapterBACK NUMBER
甲子園中止はドラフトにどう影響?
現役スカウトが高校生へメッセージ。
posted2020/05/30 11:40
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
「例年であればこの時期は、ドラフト候補のラインナップが出揃い始めるはずでした。そこでリストアップされた選手たちを夏にかけて視察していくわけですが、今年は夏の甲子園や大学選手権がなくなったことで、ほぼぶっつけ本番でドラフト会議を迎えるような感覚です。いつもよりスカウトの力量、眼力が試される秋になります」
福岡ソフトバンクホークスの山本省吾スカウトは、新型コロナウイルスによる夏の甲子園中止の影響をこう語る。
山本スカウトによると、例年のスカウトの動きは以下の通りだ。
2月のキャンプ、もしくは3月のセンバツ甲子園で集まった際、シーズン最初の情報共有を行い、全国の有力選手の状況や、それぞれのスカウトが目を付けている選手を知る。4月、5月は新たな選手も含めて、各自がドラフト候補をさらに掘り起こしていく期間。そして、6月の大学選手権で再び全員が集まった際、いったんドラフト候補選手のリストが作成される。8月の夏の甲子園で情報がブラッシュアップされ、秋のドラフト会議に向けて候補者が選定されていくという流れだ。
「それが今年は3月のセンバツ甲子園、6月の大学選手権、8月の夏の甲子園と、球団スカウトが一堂に会する機会を失ってしまいました」
来年以降のドラフトにも影響?
さらに夏の甲子園中止は今年のドラフトだけではなく、来年のドラフトにも影響が出るという。
「夏の甲子園は選手の力量を測る格好の舞台です。3年生はもちろん、実は2年生、1年生にもリストに挙げられる選手はいないか見ています。全国大会でプレーすればするほど、実力は推し量りやすい。何度もスクリーニングできるし、精査できる材料が出てくる。しかし、今年はそれがまったくないわけです。2年生の良い選手を甲子園で見られないことは、来年のドラフトにも影響してくるでしょう」
また、甲子園には全球団のスカウトが集結するため、他球団の動向にも目を配ることができる。そんなバックネット裏での駆け引きがない今年は、競合指名を避ける戦略も難しくなる。まさに、一発勝負のドラフト会議になるかもしれない。