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甲子園中止はドラフトにどう影響?
現役スカウトが高校生へメッセージ。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKyodo News
posted2020/05/30 11:40
山本スカウトは1995年夏の甲子園、星稜高のエースとして石川県勢初の決勝進出。チームを準優勝に導いた。
人生のゴールをどこに定めるか。
「甲子園のマウンドに初めて立ったときは、見たこともない大観衆の視線が集中していて、怖いと感じました。でも、怖いと思うくらい魅力的な場所でもありました。10代の少年が経験できる舞台として、世界中のどこを探しても甲子園を超えるものはありません。だからこそ、最後の夏、県大会で敗れたときに心に開いた穴は大きく、その夏の甲子園を見ることはありませんでした。
でも、時間とともに『自分の人生を自分で考えられる人間でいよう』と切り替えられたんです。甲子園という目標がなくなって、ゴールをどこに定めるか。それは『将来はプロで、長く野球を続けること』で、甲子園はその途中にあり、次に目指したのは早慶戦のマウンドでした。軽く言うことはできませんが、甲子園が通過点だったと思えるようになったとき、自分の人生のゴールが見えたと思います」
甲子園に出場した自分に頼らず、長く野球を続けたいと思う自分に希望を感じた。その姿勢が大学で悲願の日本一を果たし、13年間のプロ生活を送り、今でもスカウトとして歩み続ける原動力となっている。
これまでにもさまざまな高校生を見てきた山本スカウトにはかねてから、「甲子園をゴールととらえている子よりも、人生のゴールを見つけられている子の方が強い」という持論がある。ホークスが今年のドラフトでどんな選手を指名するのか分からないが、高卒の新入団選手に山本スカウトはこんなメッセージを送ってくれることだろう。
「甲子園が切り拓くのではなく、自ら切り開いた人生を」