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甲子園中止はドラフトにどう影響?
現役スカウトが高校生へメッセージ。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKyodo News
posted2020/05/30 11:40
山本スカウトは1995年夏の甲子園、星稜高のエースとして石川県勢初の決勝進出。チームを準優勝に導いた。
NPB延期で補強箇所も分からない
プロ野球の開幕が延期になったことも、スカウト活動に影響するという。
「スカウトは本来、チームの補強ポイントに従ってドラフト候補をリストアップするものです。それが、今年はまだシーズンが開幕していないこともあって、勝敗も個人成績も出ていません。来年以降のチームの補強ポイントが分からない中でスカウティングしなければならないという状況も、難しさに拍車をかけています」
プロ野球が6月に開幕できるとすれば、ドラフト会議まで約4カ月。山本スカウトは、準備と経験則がものを言うドラフトになると語る。
「現場に出向いて自分の目で選手を評価することも、3月下旬を最後にできていません。これからは実戦を見ずに練習だけを見て、プロで通用するかどうかを見極める眼力が求められます。また、スカウトの力量が試されるのと同時に、各チームの好みが指名に反映されることになるでしょう。実戦データがないことで、チームによって補強の傾向や選手タイプの好き嫌いが、はっきり出るようなドラフトになると予想しています」
元星稜エース、高2夏に準優勝。
今回、山本スカウトにこのインタビューをお願いした理由が、もうひとつある。
山本スカウトは高校時代、石川・星稜高のエースとして2年の夏に甲子園で準優勝を果たしている。その後、慶應義塾大学に合格し、4年秋には大学日本一に輝いた。そして、2000年のドラフト会議で大阪近鉄バファローズを逆指名して、プロの世界へ入ったという経歴を持つ。
筆者にとっては、大学野球部の2年先輩。山本先輩の背中からはいつも、甲子園準優勝という肩書に頼ることなく、自ら設定した目標をクリアしながら鍛錬していく姿勢が伝わってきた。
それは、2年夏に甲子園で準優勝しながら、3年夏は県大会で敗れて甲子園を逃した経験が大きかったという。「目指して敗れたことと、大会そのものがなくなってしまった今年の子たちはまったく違いますが……」と前置きしながら、こう言った。