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浅野拓磨が語る中断とW杯と逆襲。
「日本中から、終わったと思われた」 

text by

了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2020/05/30 09:00

浅野拓磨が語る中断とW杯と逆襲。「日本中から、終わったと思われた」<Number Web> photograph by AFLO

「浅野拓磨は終わった」という声があることも、本人は承知している。それでも浅野は、自分なりのサッカーとの向き合い方を模索しつづけている。

チームの質と勝敗は相関しない。

――たしかに、欧州ではかなり危機感が強かったですよね。それにしても、セルビアにずっといてはいけないと思うのですね?

「自分も結果を満足に残せてはいないので、難しさは感じています。でもここに止まっちゃいけないというのは常に思っていて。レベルが高いリーグかと言われたらそんなことない。個々の能力は高いですが、ドイツも高かったですし。

 リーグ中で、うちの選手の質を見たら高いだろうし、戦術とかもしっかりしてますし、ヨーロッパリーグ(EL)でも戦えるチームではあります。でもなんかサッカーって”そう”なんだろうなとあらためて、感じてるというか」

――“そう”というのは?

「ドイツにいた時は、ELってすごい上にあるものだったんですよね。シュツットガルト、ハノーファーにいた時は出られず、僕はパルチザンに来てELに出られて、戦えることがわかった。でも、パルチザンよりハノーファーやシュツットガルトのほうがチームの質が高く、質の高い選手が多い。でもハノーファーとパルチザンがもし試合をしたら、パルチザンが勝つやろなって思うんすよね。で、それってなんだろう、どういうことなんだろうと思うんです。

 例えば、僕自身は身体的な能力に自信があって、今回も練習再開にあたってチームでいろいろフィジカルテストとかあったんですけど、その中で僕、ダントツ1位なんですよ。ブンデスの時もそういうテストがあればトップのほうで、練習一部免除とかもありました。でもピッチでの結果がでず、今、僕がここにいるという現実がある。選手としても、(身体能力がピッチ上の結果に直結するとは限らないことを)常に感じさせられてきたので、それがチームとしてもサッカーってそういうものなんだなって。

 でもね、質の低いチームが質の高いチームに勝てないのかって、そうじゃないんでサッカーは。勝ったチームが強い、試合に出てる選手が良い選手、とここにきて感じました」

日本は待ってくれる、欧州は待ってくれない。

――その感覚って日本にいたころもありました?

「欧州に来て最初、シュツットガルトで初めて試合に15分出たんですが、僕を呼んでくれた監督が次の日いなくなったんです。そういう経験って日本ではないんですよね。試合翌日に練習場で朝ごはん食べながら、あれ今日監督いないなっていう話をしていて、その後携帯見て知ったんですよ。挨拶もなにもない。結果がでなかったら1試合で先発はころっと変えられるし、監督もそうだし、休みがあけたらいたはずの選手がいなくなってるとか、結果が全てだなと感じたのは海外きてからなんですよね。

 日本にいたときも、結果が全てだということは誰もが理解してるのですが、その結果を、出し始めるまでに待ってくれる環境がありますよね。育てようというか我慢して使ってくれたり、努力が評価されたり。それは日本のいいところでもあって、僕も広島でポイチさん(森保一)にそうやって育ててもらったし。何が正解というのはないですけど、日本人が外にでたときにその感覚のままだと裏目にでますね」

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