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浅野拓磨が語る中断とW杯と逆襲。
「日本中から、終わったと思われた」 

text by

了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2020/05/30 09:00

浅野拓磨が語る中断とW杯と逆襲。「日本中から、終わったと思われた」<Number Web> photograph by AFLO

「浅野拓磨は終わった」という声があることも、本人は承知している。それでも浅野は、自分なりのサッカーとの向き合い方を模索しつづけている。

珍しくSNSで強い意見を発信した。

――4月にSNSで「日本の人も当事者意識を」という主旨の投稿をしていたのがとても印象的でした。浅野選手が強めの意見を発信するのを初めてみた気がします。

「僕、毎日家族とテレビ電話をしてるんですけど、家族から聞くコロナに対する日本のゆるさ、意識の違いが気になって家族にはめちゃくちゃうるさく言ってました。もともと僕、人っていつ死ぬかわからないって思ってるタイプなんです。だから、電話もかけるか迷うくらいならかけておこうとか、トレーニングも迷うならやる。で、このコロナでより一層そういう気持ちが強くなりました。

 誰がいつどこでどういう状況になるかがわからないじゃないですか。だから今回は、全体が同じ意識じゃないと全く意味がなくなると思ったんです。家族にはセルビアの様子とか僕の考えを言っていたけど、もっと今僕にできることってなんだろうなと思ってそういう投稿をしました。

 ただ、僕ら海外にいる人が訴えたところであまり日本にいる人には親近感がないというか、現実味がなさそうでしたよね。日本とそれぞれの国と状況も違うので、海外にいる人間よりはJリーガーが言ったほうが効果はある。さらに、言うだけじゃなくて自分たちもこうしてるって行動を示さないと、現実味がないだろうなと」

――ご家族だけでなく、もっと多くの人に意識を変えて欲しかったのですね。

「多くの人には現実味がなかったかもしれないけれど、家族にはうるさく言っていたので、弟の外出を母が止めてくれました(笑)。弟にはうぜーって思われたと思うんですけどね、それでもいいんです」 

代表戦が次へのステップになるはずだった。

――さて、ベオグラードでの今季を振り返りたいです。試合にコンスタントに出場していた中での自粛期間は痛手ではなかったですか?

「どうだろう。わー試合がなくなったー、調子良かったから最悪だなーというのはなかったです。それでもやっぱり、ここにいることには満足してないですし、ステップアップするために残りの試合はとても大事だったのは間違いないです。ただ、かなり早い段階からコロナで試合がなくなるかなという予兆もありましたしね」

――五輪に出場する予定だった選手の落胆とは少し違いそうですね。

「オリンピックの世代の選手たちは、ラッキーだった人もいるだろうし、最悪だーっていう選手もいるでしょうね。僕にとっては、ステップアップのために3月と6月の代表戦がなくなったというのは、悔しいことではありましたね」

――自分を見てもらう機会が減ったからですね?

「コンスタントにリーグ戦に出ていてコンディションも良い状況で、3月、6月に代表の試合があるというのは僕にとっては良いタイミングでした。来シーズンにつながるタイミングだったのは間違いなかったので、そこは悔しいなとは思いましたけど、まあなってしまったことはしゃーないですからね。

 今回のコロナに関しては、サッカー以前にやっぱり命の大切さをすごく感じさせられました。とにかく家族とか友達とかが無事でいてほしいという思いが強くて」

【次ページ】 チームの質と勝敗は相関しない。

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