スポーツはどこへ行くBACK NUMBER
「しょうがないね」では終わらせない!
明徳・馬淵監督が選手に語りかけた願い。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2020/05/25 20:00
5月20日、部員の前で甲子園中止を伝える馬淵史郎監督。
「我々が次の世代に繋いでいく。これは責務」
明徳義塾に赴任してから一貫する、馬淵の理念「高校野球の目的は人間作り」。指導者人生で初めての難局に直面し、それが試されているのではないだろうか。
口調が、いつもの馬淵に戻っていた。
「生徒たちが卒業するまで、どういうケアをしていったらいいか? いろいろと考えているんやけど。グラウンドで苦しい思いをするなかで努力して成長して。ゲームになったら相手を研究して、時には自分が犠牲になってでも必死になって戦ってね。
そういう経験から人間が形成されていくというかね。だから、高校野球はここまで発展してきているわけです。
先輩たちが築き上げてくれたものを、我々が次の世代に繋いでいく。これは責務です。だから、今年の3年生にも『しょうがないね』だけでは終わらせたくないんです」
「兄弟みんな、明徳に入ってくれる」
3年生たちの「人間作り」のヒント。もしかしたら、それはすでに、選手たちが証明しているのかもしれない。
たとえば、エースの新地智也。
彼の父親も明徳義塾の出身だが、高校時代は控え選手だった。
同じように他の選手たちの場合でも、例えば兄がベンチ入りできずとも、背中を追うように弟が野球部の門を叩くのだという。毎年、県外出身者がおよそ8割を占めるのに、である。
「レギュラーやったらまだしも、控えだったら、普通『行くのやめとけ』言いますよ。それなのに、兄弟みんな、明徳に入ってくれる。これはね、めちゃくちゃ嬉しいことですよ」