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「しょうがないね」では終わらせない!
明徳・馬淵監督が選手に語りかけた願い。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byKyodo News

posted2020/05/25 20:00

「しょうがないね」では終わらせない!明徳・馬淵監督が選手に語りかけた願い。<Number Web> photograph by Kyodo News

5月20日、部員の前で甲子園中止を伝える馬淵史郎監督。

「やらせてやりたかったよ!」

 馬淵が高校野球ファンや関係者から一目置かれるのは、監督としての手腕だけではない。いかなる状況でも俯くことなく前を向き、自分の考えを言葉に転換するからである。

 有名なところで言えば、1992年夏の甲子園での星稜戦だ。相手主砲の松井秀喜に5打席連続敬遠を敢行したことが社会問題となっても、馬淵は自らの意見をしっかりと発信し続けている。

 率先して口にすることはない。ただ、聞かれれば自分の発言に責任を持ち、答える。そんな実直な馬淵だからこそ、質問した。

 ――学生の健康を守り、学業を優先させるのも大人の役目で、今回の決断は正しかった。でも、彼らに1日でも早い日常を取り戻させるのも大人の仕事。その観点から言えば、影響力のある夏の甲子園を、「何とか実現できなかったのか?」とも考えてしまいます

 馬淵は「うん」と即答しながらも、冷静に高校野球の現状を訴える。

「たとえば、6月から今まで通りの授業が始まって、全体練習もできたとしますか。心肺機能を高めたり、頑張って体を作ったとしても、暑い7月に果たして無事故でやれるかどうか、僕は疑問ですよ。練習試合だってできていないわけですしね。最低でも、2カ月は本格的なトレーニングが必要だと思います」

 一瞬、沈黙が流れる。

「できるなら……」

 馬淵の語調に熱が帯びだした。

「やらせてやりたかったよ! 僕も生徒たちと一緒に3年間、生活した。やれるもんならやらせてあげたい。でも、やっぱり今回は致し方ないわ。本当にそう思う……辛いけど」

 それは、苦しくとも現実を受け入れ、選手たちの将来を自分のこと以上に考え毅然と振る舞う馬淵の、偽らざる悲痛な叫びだった。

全国各地で代替の大会は開催されるか?

 夏の甲子園が中止となり、東京都をはじめ「代替の大会を開催する」と明言する地区が出るなか、高知県はまだ結論を出していない。

 6月6日までに方針を打ち出す予定というが、仮に県主催の大会が行われなかった場合、馬淵は付き合いのある強豪校や県内の高校との試合を開催したいと構想を抱く。

 それも、選手たちに道を切り開かせるため。

【次ページ】 「我々が次の世代に繋いでいく。これは責務」

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