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「しょうがないね」では終わらせない!
明徳・馬淵監督が選手に語りかけた願い。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2020/05/25 20:00
5月20日、部員の前で甲子園中止を伝える馬淵史郎監督。
インターハイの中止はショックだった。
対外試合が禁じられる昨年12月から、半年近くも実戦を積めていない。4月16日に高知県にも緊急事態宣言が発出され、チームの予定をキャンセルしてもなお、馬淵はチームの士気を高め続けていた。
「全国には自宅で自主練したり、オンラインでしか仲間と繋がれない高校がたくさんある。でも、お前たちは短い時間でも外で体を動かせる。それだけでも、恵まれている」
そんな馬淵にも、「もしかしたら夏も……」と、不安の色が濃くなったと自覚した瞬間があった。インターハイの中止だ。
明徳義塾は、東京大など名門大学の合格者を輩出するなど学力向上も促進しているが、どちらかと言えば「スポーツ強豪校」のイメージのほうが強い。2002年に全国制覇を果たした野球部をはじめ、ゴルフでは横峯さくらや松山英樹、相撲では琴奨菊や徳勝龍が巣立つなど、全国屈指の力を誇るクラブが多い。
馬淵はスポーツ局の局長として各部活の顧問の本気度を知るだけに、高校スポーツの一大イベントの中止が与える学校のダメージ、消沈する彼らの姿が他人事とは思えなかった。
そして、インターハイの中止が発表されてから約1カ月後、「夏の甲子園」と代表校を決める地方予選も消滅した。
「選手を預かる監督の立場からしたら……」
言いたくはない。だが、事実を問われれば「しょうがない」と認めてしまう自分を嫌悪するように、馬淵が言葉を湧出させる。
「誰も恨めないですよ。インターネットあたりでは『感染予防を十分にすればできるんじゃないか?』とか、結構書かれていますけどね。楽しみにしていた人はそう思うでしょう。練習試合くらいなら、無観客とか感染予防をすればできるかもしれませんよ、野球は人との接触がそれほど多くないスポーツやから。
でもね、イベントとして考えたら、僕は難しかったと思う。(大会中止を決定した頃)首都圏と北海道の緊急事態宣言が解かれていない。その地域はまだ登校も全体練習もできないのに、先に『野球の大会はやります』と言えんでしょう。選手を預かる監督の立場からしたら、万一のことが起きてからじゃ遅いのですわ」