オリンピックへの道BACK NUMBER
羽生結弦が公開した3本の芸術的動画。
ライター松原孝臣はこう読み解いた。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2020/05/09 20:00
「#SkateForward明るい未来へ」で3本の動画を公開した羽生。そこには彼が歩んできた人生が織り込まれていた。
いくつもの苦難に襲われて今日まで進んできた。
今回、演じてみせたプログラムを観て、あらためて羽生のこれまでを思い起こす。
字幕にその日付があるように、東日本大震災で被災し、それを乗り越えてスケーターとしてあらためてスタートを切った。
その後、世界のトップを争うスケーターの1人になり、2つのオリンピックで金メダルを獲得。だが、苦難の連続と言ってもよかった。
2014年の中国杯では6分間練習でのアクシデントに見舞われ、そのシーズンには手術に至る病にも見舞われた。
平昌五輪のある2017-2018シーズンは、NHK杯の公式練習で怪我をし、オリンピックに出ることも危ぶまれるほどの重傷を負った。
翌シーズンもロシア杯での公式練習で重傷、そこから世界選手権出場を果たした。
「漫画みたいで」
本人も笑って言ったことがあるほど、いくつもの苦難に襲われて今日まで進んできた。
「真っ暗だからこそ見える光があると信じて」
3本の動画は、あらためて羽生の足跡を思い起こさせたし、それらを乗り越えて今日があることを思わせた。
オリンピックをはじめとする主だった成績を見れば、光に満ちた足取りかもしれない。
でも、これまでのプログラムとそこからよみがえる足跡は、「真っ暗だからこそ見える光があると信じて」という先だっての羽生の言葉の通り、光を手探りで求めながら歩み、進んできた道であったことを伝えている。
今、フィギュアスケート、いや、日本や世界が置かれている状況もそこに重なるだろう。困難は乗り越えられていないし、続いていく。それでも、その先に光があることを信じて進むことの大切さを伝えたい。
そんなメッセージが込められているようだった。