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ブンデス無観客試合で再開決定に、
原口元気&細貝萌の言葉を思い出す。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/05/08 11:00
リーグ中断前、無観客で行われたボルシアMGの試合。今後しばらくはこのような風景が続くことになる。
原口「どうしても気持ちの部分で」
当時、原口は無観客試合終了後に正直な思いを吐露しています。
「どうしても気持ちの部分で難しかった。やっぱりサポーターの力で突き動かされている部分が多いと感じました。(無観客試合は)やりにくいですよね、やっぱり。特に僕のような選手は力が出ない。ゴールしたことより、思い通りのプレーができなかったことに悔いが残ります。サポーターの後押しを受けられず力を出せなかった自らの未熟さも含めて」
プロサッカー選手は、どんなシチュエーションでも全力を尽くして所属チームの勝利を目指さねばなりません。原口自身もその責任は十分に認知しているはずで、だからこそ、彼の言葉には真摯な思いが投影されているとも思いました。
原口が証言した「サポーターの後押し」というものは抽象的な概念かもしれませんが、四方を囲まれる“舞台”の真ん中に立つ選手たちにとっては、ダイレクトに響くものなのかもしれません。
観衆が選手を見下ろす形の意味。
元浦和レッズのプレーヤーで、現在はメディアで活躍する福田正博氏はこんな表現でプロサッカー選手の境遇を説明してくださいました。
「一部オペラなどは異なるけど、通常のコンサートやライブは舞台に上がるアーティストを観衆が見上げる形で鑑賞したり、応援したりしている。一方でスポーツは大抵、観衆が選手たちを上から見下ろす形で観ている。選手はいわば評価されているような意識になる。だから、そこで結果を出したとき、選手たちは心から『責任を果たせた』という充実感に満たされるのかもしれない」
僕が取材したもう1つの無観客試合は、2016年2月21日。トルコ・シュペルリーガのブルサスポルvs.フェネルバフチェでした。
このときはホームのブルサスポルサポーターがアウェーゲーム応援時にリーグ規定違反行為をしたため、ホームゲームの無観客試合実施を科せられたのですが、なんと前日まで有料試合か無観客試合かの可否が決定していませんでした。