ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ブンデス無観客試合で再開決定に、
原口元気&細貝萌の言葉を思い出す。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/05/08 11:00
リーグ中断前、無観客で行われたボルシアMGの試合。今後しばらくはこのような風景が続くことになる。
ドイツでほぼなかった無観客試合。
ドイツは各業種の見本市や展示会、いわゆる「メッセ」を数多く開催してきましたが、そのようなイベントも当然中止されており、世界的に有名な大型イベント、通常9月半ばから10月中旬に開催されるミュンヘンのオクトーバーフェストも中止が発表されています。したがって、多くの観客が訪れる可能性があるブンデスリーガのゲームも当然開催禁止の対象ですが、無観客での開催を条件に試合実施の承認を得る形となりました。
「無観客試合」
この言葉を聞くと、何かペナルティ的措置のニュアンスが感じられてしまいますよね。例えば、ルールを犯したクラブに対してリーグや連盟が制裁の意味を込めて無観客試合に指定するケースはこれまでもありました。
ちなみに1963年に創立されたブンデスリーガの歴史では、今年の3月11日に今回の新型コロナウイルス流行による影響で実施されたボルシア・メンヘングラッドバッハvs.1FCケルンの1試合のみです。
つまり、ドイツのサッカーファン、サポーターの大半はブンデスリーガの無観客試合を体験したことがありません(UEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグのゲームではドイツ国内でも実施経験があります)。したがって実際に無観客で試合が行われた場合、どのような反応が起きるのかが気になります。
2014年、浦和vs.清水の無観客試合。
僕自身は過去に2度、無観客試合を取材したことがあります。最初は一部の浦和レッズサポーターによる差別的横断幕掲示により、Jリーグ初の無観客試合となった2014年3月23日の浦和レッズvs.清水エスパルスでした。
浦和と清水のゲームは浦和のホーム・埼玉スタジアム2002で実施されましたが、当日のスタジアム周辺は人の気配が感じられず、整然とした雰囲気を醸していました。
試合2時間前にスタジアムに到着した浦和の全選手が、すぐさまピッチに整列し、当時キャプテンを務めていた阿部勇樹がチームを代表して差別撲滅に向けた宣誓を行いました。
その後、いつもと同じく両チームの選手がピッチ内でウォーミングアップをしたのですが、観衆を盛り上げるような音楽は当然鳴らず、何万人もの人々が試合を心待ちにする、あの高揚感を得ることはできませんでした。
耳に届くのは選手やコーチングスタッフが発するコーチングや掛け声などで、日本代表の国際AマッチやAFCチャンピオンズリーグなどのゲームで実施される、試合前日の公開練習といった趣を感じました。