ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ブンデス無観客試合で再開決定に、
原口元気&細貝萌の言葉を思い出す。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/05/08 11:00
リーグ中断前、無観客で行われたボルシアMGの試合。今後しばらくはこのような風景が続くことになる。
細貝「僕自身も順応しなくては」
その結果、当日のスタジアム周辺は多くのサポーターが詰めかけて大混乱。しかも僕はトルコでの取材経験が少なく、試合会場もブルサスポルが新設したホームスタジアムでの開催ということで、メディア入口さえ分からずに悪戦苦闘しました。
ちなみにメディア受付前に立っていた警備員に「メディアだから入れてくれ」と言っても、「どう見てもお前は観光客じゃねーか」と言われて追い返されそうになり、仕方がないので当時ブルサスポルに所属していた細貝萌を通してクラブ関係者を呼び出してもらい、ようやく入場を許されたりもしました。
細貝は、試合当日に無観客が決まったことについて、冷静に受け止めていました。
「致し方ないかなと。それを気にしても何かが変わるわけでもないですしね。その土地の人々や文化には違いがあるけど、それに触れて僕自身も順応していかなくてはならない。それもまた、サッカー選手として生きている自分にとって貴重な経験になるから」
細貝の言葉には、新型コロナウイルスと向き合うひとつの示唆が含まれているようにも感じます。
ウイルス後のサッカーはどうなるか。
「僕自身も順応していかなくてはならない」
現在、世界中で様々な専門家や識者がウイルスに関する見解を明らかにしています。
なかでも「ウイルス前」と「ウイルス後」で人々の生活に変化が生じる事態は、深刻に捉えねばなりません。今後様々な経済活動が再開されて日常生活が戻っても、ソーシャルディスタンスの徹底など、これまでとは異なる不自由が生じるかもしれません。
また人々のコミュニケーション手段も、遠隔の手法が用いられる機会が増える可能性があります。
「無観客試合」を経験すれば、原口も痛感した「サッカーの魅力」を改めて認識するのは当然でしょうが、それでも人々の健康を維持し、人生の楽しみのひとつでもあるスポーツを享受し続けるためには、どのように身を処すべきなのか――。
ドイツ・ブンデスリーガの再開は、この先、世界のサッカー界が指針とする、ひとつのモデルケースになるのかもしれません。