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JのMVP、代表で目立つ大卒の好選手。
相馬勇紀&外池監督に聞いた濃密さ。
text by
森迫雄介Yusuke Morisako
photograph byKanae Ishiguro
posted2020/05/03 11:30
早大ア式蹴球部時代の相馬勇紀と外池監督。大学サッカーを経由することで人間的にも大きくなった好例だ。
レギュラーなら年間約30試合。
競技面における大学進学のメリットの1つに、実戦経験の積みやすさがある。
プロの世界で高卒選手が即戦力として扱われるのはかなりハードルが高く、高卒1年目や2年目でレギュラークラスとして出場機会を得られる選手は決して多くない。多くの若手選手は、出場機会を求めて下部カテゴリへのレンタル移籍や、FC東京やガンバ大阪、セレッソ大阪のようにU-23チームを保有している場合はそこでのプレーを強いられる。
一方、大学サッカーではどの選手にも平等に4年間という時間的制約が存在する。そのため、毎年強制的に選手の入れ替わりが起きるので、比較的出場機会を得やすい。
ちなみに年間試合数は、地域ごとに多少のバラつきこそあるがリーグ戦が20試合前後ある。それに天皇杯地区予選や総理大臣杯予選などのトーナメント戦を加えると、どこの大学に属していてもレギュラークラスであれば少なくとも年間約30試合は実戦機会が確保される。
相馬勇紀は相手分析、練習メニューも。
加えて大学サッカーでは、相手チームの分析から戦術の設定まで学生が主体となって行なうことが多い。
「僕たちは学生主体のサッカーだったので、相手の分析を始め多くのことを自分たちで話し合いながら決めていました」とは、現名古屋グランパスの相馬勇紀が早稲田大ア式蹴球部に在籍していた頃の言葉だ。
相馬は早大時代、敵チームの分析と練習メニューの作成を担当する班に属しており、ミーティングや練習でチームメイトと日常的に議論を交わしていた。
綿密なスカウティングで敵の弱点をあぶり出し、戦術のすり合わせを行なって実戦に向かうプロセスの経験が、サッカーへの理解を深めたことは容易に想像できる。
早大だけでなく筑波大蹴球部もまた、学生だけでデータ分析から栄養管理まで様々な角度からチーム強化にあたっていることで知られている。
監督やコーチから一方的に与えられた戦い方で試合をこなすのではなく、自分たちの頭で考えながら日々抽出される課題に取り組み、次の試合への糧とする。このように、試合に向かうまでのプロセスの濃度は、他の育成年代はおろかプロをも凌駕しうるものだ。