酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「公立校野球部のモデルケースに」
奈良教育大、学生監督の指導法とは。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2020/04/22 07:00
奈良教育大の山口裕士監督。「教育大」というカテゴリーの中で、どこまで自分たちの力を伸ばしていけるか。
主体性と工夫で強くなっていく。
この話を聞くと「仲良しクラブ」のようなものをイメージしがちだが、そうではない。選手達が主体的に練習し、工夫して技術を磨いて強くなっていく――そのようなチームを目指している。
この日の練習の後半はトスしたボールを打つゲーム形式となった。「走者一塁」などの設定で、守備側、攻撃側も状況に応じてプレーするというものだったが、漫然と守備に就く選手や状況判断ができていない選手が目立った。またゲームそのものも間延びした印象だった。
「レベルの高い野球を経験していない選手には、何がダメなのか言ってもなかなか理解できないんです。しっかり考えてプレーしてこそ成長する。勝利を求めてプレーしてこそ、野球の本当の楽しさがわかると思うんです」
妥協しながらチームをいい方向に。
新4回生でエースの堀川颯は奈良北高校時代、強豪校との対戦となったこともあり、夏の予選では1勝もできなかった。
「高校時代は悔しい思いをしたので、大学に入っても自分のレベルを上げることはできると思って野球を続けました。今は後輩に何を伝えるかも考えています。球速130km/hほど。基本はまっすぐで制球力はパワプロで言ったら“B~C”くらいです。今年はエースとしてリーグ優勝したい。防御率は1点以下を目指したいです」
保健体育専修で学ぶ堀川は、卒業後は小学校の教師を目指している。その一方でこのようにも語っている。
「うちのOBが多いクラブチームで野球を楽しみたいと思います。子どもができたら少年野球も指導したい」
新3回生の小川慎太朗は、準レギュラークラスの一塁手だが、昨秋からキャプテンになった。奈良教育大ではキャプテンは練習や試合で直接指示をする。
「僕の学年にはリーダーシップがあっても我が強くて自分の意見を曲げられない人が多いんです。監督が僕を“ある程度妥協しながらチームをいい方向にまとめることができる”と判断してキャプテンに指名しました」