酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「公立校野球部のモデルケースに」
奈良教育大、学生監督の指導法とは。
posted2020/04/22 07:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
奈良教育大学硬式野球部は、筆者がグラウンドを訪れた3月30日が最後の練習日となった。大学側が4月からの練習の自粛を要請したのだ。
志賀直哉旧居など歴史的な建造物も多い奈良市高畑町、奈良教育大のグラウンドで、学生監督の山口裕士はノックバットを振っていた。
満開の桜がキャンパスを彩っている。足元には鹿の糞が散らばる。
選手達はよく鍛えられていて、きわどい打球にもグラブを伸ばしよく追いついていた。
時折短く指示を飛ばしながら、黙々とバットを振る山口を見ていると、ちばあきおの名作漫画「キャプテン」を思い出した。
「昨年の秋に学生監督になりました。チームを引き継いで感じたのは、思いを選手に伝えるのは難しいということです。自分で野球をするほうが簡単ですね」
3回生の秋に監督就任要請。
県立郡山高校出身。天理、智辯学園と言う二大強豪が覇を競う奈良県では「公立の雄」ともいうべき学校だ。郡山高は甲子園には春夏ともに6回出場し、先輩には昨年ベストナインに輝いたロッテの荻野貴司などがいる。
山口が3年生の2016年には準決勝で智辯に5-6で惜敗している。大学入学後も捕手として活躍した。しかし3回生の秋に監督就任を請われると、選手を引退して監督に徹することにしたのだ。
「小学校の時にレントゲンで前腕の回内と回外に障害があることが分かったんです。それでも頑張って野球を続けましたが、監督になることになって、現役をきっぱりと諦めることにしました。
これまで奈良教育大野球部は名目上の監督はおられたのですが、実質的にキャプテンがチームを率いていました。でも、僕は監督としてチームをしっかり指導したいので専念することにしました」