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ドイツ人選手は寄付も巨額で明確。
ロイスの地元愛、キミッヒらの基金。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2020/04/19 19:00
ロイスはやんちゃな印象が強いが、こういう時にキッチリ行動力と哲学を発揮できるかっこいい人間なのだ。
ロイスはドルトムントの中小企業を支援。
巨額の年俸を手にする選手たちは、そうしたサッカーにまつわる周辺の苦境を解決するために寄付を行う。だがドイツ人選手の場合、これも目的がはっきりした形なのが特徴的だ。
ドルトムントの主将であるマルコ・ロイスは夫婦で#HelpYourHometownというスローガンのもと同名のウェブサイトを立ち上げ、地元ドルトムントの中小企業支援を行うことにした。
ロイス夫婦も50万ユーロ(約6000万円)の寄付を行い「街を個性的なものにしてくれる地元の小さな美容院、パブ、レストラン、ブティックの手助けをしたい」というメッセージで具体的な狙いを明らかにしている。
ロイスはドルトムントのユースで育ったが、シニアでのデビューは3部相当のレギオナルリーガにあったロートバイスアーレンだ。その後ボルシアMGで活躍、’11-’12シーズンには、チームは4位だったにも関わらずドイツ年間最優秀選手に選出されている。
そして2012年夏、バイエルンをはじめ欧州のビッグクラブへの移籍も噂される中でドルトムントへの帰還を望み実現させ、その後はドルトムント一筋。そうしたキャリア形成は地元愛に基づくものだったとあらためて証明している。彼の場合、今回の基金設立は生き様そのものでもある。
バイエルンではキミッヒとゴレツカが。
バイエルンではジョシュア・キミッヒとレオン・ゴレツカの1995年2月生まれの2人が動いた。まずは自分たちが100万ユーロ(約1億2000万円)を寄付し、「WeKickCorona」という基金を設立。同名のウェブサイトも同時に立ち上げた。
こちらはニコ・コバチ元バイエルン監督やロベルト・レバンドフスキ、レロイ・ザネだけでなく他競技も含めたそうそうたるメンバーが寄付を行っており、今では370万ユーロの寄付金が集まっている。
ゴレツカは「うちに縛り付けられているような状況だけど、世の中の助けになる方法を考える時間はたくさんあった。いつも連絡を取り合っていたジョシュアと一緒に基金を立ち上げることにしたんだ」とスカイのインタビューで語っている。
面白いのは、この基金はウェブ上から寄付だけでなく、利用の申し込みもできること。会社名や代表者などに加え、理由や必要金額を記入する。キミッヒは「僕たちには基金のチームがいて一緒に問い合わせのリストを確認している。大きな責任を背負っているから透明性を持った判断をしようとしている」と答えている。利用できる業種は限定しないが、必要なところに届くように頭をひねっているようだ。