サムライブルーの原材料BACK NUMBER
横浜F・マリノスの密着ドキュメント。
主将・喜田拓也「仲間の違う一面が」
posted2020/04/01 11:40
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
KYODO
映像で残した記録は、嘘をつかない。
昨シーズン、横浜F・マリノスは画期的なメディア戦略に打って出た。練習、ミーティング、ロッカールーム、宿舎……いつでもどこでもカメラが入り、チームの日常を記録するとともに、密着ドキュメンタリーシリーズ「THE DAY」としてクラブの公式You Tubeチャンネルにおいて月1、2回のペースで配信した。
シーズンが終わってから表に出すのではなく、あくまで同時進行で。勝っていようが負けていようが“リアル”を随時提供したことは、反響を呼んだ。
カメラを回したのは、日韓ワールドカップに臨むトルシエジャパンを記録したドキュメント映画『六月の勝利の歌を忘れない』の撮影者でディレクターの茂野直樹さん。
プールサイドで催された決起集会でフィリップ・トルシエが服のままプールに落とされるというシーンは、今振り返っても衝撃度マックスだった。そのドキュメント映像のプロが今回、チームのジャージーを着込み、スタッフの立ち位置で密着した映像は非常に説得力があった。
チームメイトの違う一面を見ることができた。
このたび未公開部分を収めた総集編がDVD化されると聞き、試作品を先行して見せていただいた。
アンジェ・ポステコグルー監督がミーティングで選手に語りかけるシーンが多く盛り込まれていて、チームの日常と重ねてみるとなぜこのチームの結束が強かったか、パズルが解けた気がした。主人公はチームの1人ひとり。ただ映像を見ていくと、キーマンはやはりこの人だと思えた。
複数制キャプテンの1人、喜田拓也である。
――試合前のロッカールームを含めて普段はクローズの場所にビデオカメラが入ることに喜田選手は抵抗を感じませんでした?
「カメラが入ることで何かが変わるというのはないですけど、始まった当初は試合前にみんな集中している時間に(カメラが)あるというのは少なからず違和感を覚えましたね」
――「THE DAY」は月に1、2回のペースでアップされていきました。
「僕もそうですけど、多くの選手が見ていたとは思います。というのも全部が全部、知っているシーンじゃないので、チームメイトの違う一面を見ることができたり、こう考えているんだと把握できたりしました。
これは個人的な意見ですけど、定期的に配信されるので常に誰かに見られているという感覚で行動しなければならないし、チームとしてそういう感覚や意識が磨かれていったようにも感じます」