サムライブルーの原材料BACK NUMBER
横浜F・マリノスの密着ドキュメント。
主将・喜田拓也「仲間の違う一面が」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2020/04/01 11:40
昨季、15年ぶりのJ1優勝を果たした横浜F・マリノスのイレブン。キャプテンの1人、喜田(中央)はシャーレを掲げて喜んだ。
シーズンが進むにつれてみんなが声を掛け合うように。
――配信を見た周りの人から、選手それぞれに反応が返ってきたとか。
「本当に反響は大きかったですね。他クラブの選手たちもチェックしてくれていました。負けた後の練習の雰囲気に『別にチームの空気、悪くないね』と言ってもらえると、あっ、そうなんだ、と。
チーム内にいると雰囲気を変えることが難しいなと感じていても、外からの目だと悪くない雰囲気に見えたりする。こういう声もチームのことで判断していく材料の1つになったし、密着されるいい側面だなとは感じました」
――1シーズン分をまとめて見てみると、チームの変化に気づきます。当初、試合前やハーフタイムのロッカーでは複数制キャプテンの喜田選手、扇原貴宏選手、天野純選手(昨年7月にベルギー移籍)が中心になって声を掛けていましたが、シーズンが進むにつれてみんなが声を掛け合うようになっていきます。
「前年は残留争いをしていますし、僕たち3人が先頭に立ってチームを変えていきたいという思いがありました。3人いると、3人分のパワーが出せます。
自分たちを貫く声掛けだとかチームの方向性を(3人の姿勢で)示していきたいと思ってやっていくと、チームのみんなが受け入れてくれて、いい反応を見せてくれて。
面白いもので段々とみんな要求しあうし、思ったことは声を掛け合うし、一方向じゃなくてディスカッションになっていって、『チームのために』というみんなの気持ちも見えていました。
シーズン終盤は僕もタカくん(扇原)もそんなに前に出ていかなくても良かった。たくましくて、いい集団になっていましたから。それはキャプテンの1人として、凄くうれしいことでした」
大切にしている言葉は「ファミリー」。
――総集編ではポステコグルー監督がミーティングの席で「常に自分たちのことだけ話をしているようなチームになろう」「怖れてプレーしたいのか!」「相手は関係ない。常に自分たちのサッカーをするんだ」などと熱く語り掛けるシーンが印象的でした。
「監督は僕らに伝わりやすいように言葉の使い方、テンションを凄く考えてくれるので、スッと(言葉が)胸に入ってくる。いかなるときもF・マリノスのサッカーを、自分たちを貫き通す、信じてやる大切さを教えてくれています。
選手個々の能力が伸びるようなサッカーをしているし、それをみんなでつくっていく面白味を感じています。それともう1つ、監督の言葉で僕たちが大切にしているものがあります」
――どんな言葉でしょうか?
「ファミリーです。仲間のために頑張る、仲間のために体を張る、仲間を大切にする集団になろうというのは、僕自身が大切にしてきたことでもありました。
だから監督の言葉は、自分のなかで凄く響きました。サッカー選手としてだけではなく、1人の人間としても監督は尊敬できるし、多くのことを教わっています。それはみんな同じだと思いますね」